袈裟丸連峰

袈裟丸連峰登山

袈裟丸連峰

Kesamarurenpo

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[袈裟丸連峰登山レポ]
後袈裟・中袈裟・奥袈裟・法師岳を縦走! 袈裟丸連峰縦走その2

2015年9月21日(月)~2015年9月22日(火)天候:晴れ時々曇り
後袈裟丸山 ~ 中袈裟 ~ 奥袈裟 ~ 法師岳 ~ 奥袈裟 ~ 中袈裟 ~ 後袈裟丸山 ~ 境界尾根登山口 ~ 小中駅
  • 袈裟丸山(けさまるやま)日本三百名山ぐんま百名山
  • 栃木県日光市、群馬県沼田市と群馬県みどり市にまたがる山。袈裟丸山は前袈裟丸山・後袈裟丸山・中袈裟丸山・奥袈裟丸山・法師岳の総称であるが、一般的に登山の対象となっているのは、前袈裟(1,878m)・後袈裟(1,908m)。なお前袈裟・後袈裟をつなぐ道の途中にある八反張の風化が激しいため通行禁止となっている。つまり、後袈裟丸山・中袈裟丸山・奥袈裟丸山・法師岳はコースで繋がっているが、前袈裟だけは通行禁止の影響で分断されている。

袈裟丸山のコース

袈裟丸山の登山口は、前袈裟丸山を目指す、塔ノ沢登山口(標高840m)、折場登山口(標高1,200m)。後袈裟丸山を目指す群界尾根登山口(標高1,140m)の3カ所。
なお、日光の皇海山・庚申山方面から縦走してくるコースも存在するが、地図上で登山道は難路指定されており、利用者も少ない。
また、袈裟丸山の塔ノ沢・弓の手コースの一部は関東ふれあいの道「群馬コース30/寝釈迦のみち」に指定されている。
  • 塔ノ沢コース登り利用
  • 塔ノ沢登山口から寝釈迦、賽の河原を経て前袈裟丸山を目指す。公共交通機関を利用する場合、最も駅に近い塔ノ沢登山口を利用することになる。
  • 群界尾根コース下り利用
  • 群界尾根登山口から、八重樺原を経て後袈裟丸山を目指すコース。
  • 弓の手コース
  • 折場登山口から、賽の河原を経て前袈裟丸山を目指す。3つの登山口で最も標高が高いため、マイカー利用なら比較的楽に登ることができる。
山と高原地図
袈裟丸連峰のコースが紹介されているのは、山と高原地図の「赤城・皇海・筑波」です。地図を持たない登山は危険ですので、必ず地図を持って登りましょう!

袈裟丸連峰の登山計画

プラン
シルバーウィーク5日間の天気は全て晴れ。これは登山に行かなければと計画したのが、日本三百名山「袈裟丸山」と日本百名山「皇海山」の縦走。GW以上の混雑が予想されているシルバーウィークなので、あえてマニアックな山を選んだ。
コース・アクセス
本コース上に避難小屋はあるものの、有人山小屋はないため、今シーズン初となるテントを持って登る。また、これまで体験したことのない初の2泊なので、荷物はこれまで体験したことのない重さ。また、レンタカーも検討したが、シルバーウィークで全て出払っていたため、わたらせ渓谷鉄道の沢入(そうり)駅から歩いていける塔ノ沢登山口を選択。避難小屋で1泊し、2日目に足尾山塊に抜け、3日目に皇海山を登る。はずだった..。

関連レポート

袈裟丸連峰コースレポート

後袈裟丸山 ~ 中袈裟丸山

【10:24】後袈裟を出発。
後袈裟から中袈裟まで、人が通らないためシャクナゲなどの木々が登山道に覆いかぶさっている箇所多数。これまで以上に登山道は廃れているが、目印だけは一定間隔で設置されているため、目印を頼りに歩く。途中の笹藪が生い茂る登山道も、踏み跡と薮の開け方から、中袈裟まではかろうじて道の判別が可能。
【11:11】中袈裟丸山に到着。
山頂スペースは畳1枚分ぐらいしかない。この日はガスに包まれており展望もきかない。

中袈裟丸山 ~ 袈裟丸山最高峰

中袈裟丸山から先はこれまで以上に道がわかりづらい。登山道を倒木が塞いでいるケースが多くなり、部分的に尾根が広がっている場所も。それでも、頼りない踏み跡と目印を頼りになんとか進める。 ただ、立ち止まって道を探しながら進むような場所もあるため、スピードは遅くなるし、不安と緊張で精神的にすごく疲れる。
山と高原地図では、袈裟丸連峰最高峰(1,961m)と奥袈裟(1,957m)は別々に存在する。サイトなどでは「袈裟丸連峰最高峰=奥袈裟(1,961m)」と紹介しているものもあるので、どちらが正しいかは不明。袈裟丸山最高峰の手前に三角点があったので、ココが1,957m(奥袈裟?)だったと思われる。その三角点を過ぎたあたりから、袈裟丸連峰最高峰まで長い間目印が設置されていない。コース上に笹が生い茂っているものの、コースであることは確認できるが、目印がないのでとても不安。袈裟丸連峰最高峰に到着したときは、安堵感から体の力が一気に抜けたのを覚えている。
奥袈裟あたりの縦走路で、初めて2人連れの登山者とすれ違う。極端に人がいないコースなので、登山者に会うだけでめちゃくちゃ嬉しい。しかし、この登山者以降、袈裟丸山に引き返して下山するまで誰にも会うことはなかった。
【13:30】袈裟丸山最高峰に到着。
中袈裟丸山同様に、山頂スペースは畳1枚分ぐらい。引き続き霧に覆われ展望はきかない。
なお、奥袈裟あたりのシャクナゲに覆われた道でコンパスを落としたことに気づく。一応予備のコンパスを持参している事と、落とした地点も曖昧で戻るわけにもいかないのでそのまま進むことに。

袈裟丸山最高峰 ~ 法師岳

袈裟丸山最高峰以降、尾根が広がり始める。これまで、わかりにくい道も細い尾根だったためなんとか歩けたが、尾根が広がり始めることでさらに道がわかりづらくなる。
小法師尾根入口と書かれた道標。法師尾根ではなく、小法師尾根とある。道は一本道の筈だが、小法師岳という山が法師岳の東側にある。この道標と先ほどコンパスを落としてしまったことで、一気に不安が増してくる。予備で持っていたコンパスは小物入れとセットになったおまけのようなコンパスなため、指す方向が定まらず、この状況では心もとなさ過ぎて使い物にならない。のちに調べると、やはり地図にはない小法師尾根という小法師岳に続く尾根道があるようだ。しかし、このときはその尾根に入り込まず、きちんと北に進めていたようだ。

これまでわかりにくい道も目印を頼りに歩いてきたが、ある地点以降、どうしても道がわからず次の目印が見つけられなくなる。翌日知るが、この地点は法師岳と男山の鞍部手前。気付かないうちに法師岳のピークは通過していたようだ。尾根は広がり、目の前の鞍部には背丈ぐらいの笹藪が一面に広がっている。

一度背丈ほどある笹藪を漕ぎながら強引に進み、最低鞍部の地点で、東西(右左)に平行移動しながら藪漕ぎをし道を探すも見つけられず。この時点で、強引に前のピークに進むか、後ろのピークに戻るか迷う。決断した答えは、最後の目印まで戻ること。しかし、最後の目印を通過してから、道なき道を強引に下ってきているので、もはや歩いてきた道がわからない。方角だけはわかるので笹藪を漕ぎながら斜面に取り付き、急斜面の道を必死に登って戻る。この戻るという行為で、大幅に体力と精神力を消耗することに。このまま道に戻れず遭難するかもしれない不安と戦いながら必死に斜面を登ったところでなんとか目印を発見。疲労と不安で体力的にも精神的にもズタボロ状態。

この時点で時間は16時54分。道がわからずココで1時間半浪費している。本日これより先に進むのは困難と判断し、テントを張れる場所を見つけて緊急野営し、明日改めて進むか戻るかの判断をすることに。テントは張った後は疲れと焦燥感から食事もとらずにそのまま眠りにつく。

法師岳 ~ 後袈裟丸山

【7:14】テントを撤収して、昨日道がわからなくなった最後の目印の場所まで行く。
この日は霧が晴れ、目の前のピーク(後に男山と判明)がハッキリと見える。その山頂をコースが通っている可能性は高いので、目印に拘らず、笹藪を漕いでひたすら目の前の山頂を目指すことも考えたが、前日にコンパスを落としていたことで、目の前のピークがコースであるという事に確証が持てない。小法師尾根に入り込んでいる可能性など不安要素もあり、万が一ピークまで進みコースではなかった場合、遭難がほぼ確定となる恐怖。

結局、リミットを1時間と決めて、道を見つけられなければ袈裟丸山まで戻ることに決める。体力の消耗を最小限にとどめるため、最後の目印がある地点にザックを置き、空身で道を探すことにした。

【8:34】法師岳に到着。
前日は、この法師岳のピークを通過したが気づかなかったのか、それとも山頂を少し巻いて通過してしまったのか、今となってはわからないが、このときはじめて、緊急野営した地点が法師岳と男山の中間地点だったことに気が付く。そうなると、目の前のピークが男山だった可能性が高まるが、今更戻ることもできない。

法師岳から袈裟丸連峰最高峰までの道は、非常にわかりづらいので、この区間は体力と精神力を消耗する。道に迷うこと数回、目印を見付けると心底ホッとする。足尾方面から袈裟丸連峰最高峰を目指す場合、袈裟丸連峰最高峰直前の道が非常にわかりづらいので注意が必要。目印の先が笹藪に覆われており道がわからず、ザックを下ろし周辺を空身で探しようやく道を見つける。

【10:36】袈裟丸連峰最高峰に到着。
まだまだ先は長いとはいえ、袈裟丸連峰最高峰へ到着できたことで、心理的には相当楽になる。

【12:44】中袈裟丸山に到着。
中袈裟丸山以降、殆ど道に迷う場所はなかった筈なので、ココまでくれば生存確率がグッと上がる。昨日と異なり霧はなく、青空が広がっている。

後袈裟まで、もう少しの地点でスタミナ切れを起こし動けなくなる。それもそのはず、水がないため食事も喉を通らず、昨日の朝から殆ど何も食べていない。喉がカラカラでも食べられるものはないか探したところ、ホタテの水煮缶を発見。このホタテの水煮缶の水とホタテで、水分とスタミナ両方を補うことができ本当に助かった。ホタテの水煮缶がなかったら、この日のうちに戻ってくることはできなかったかも。
【13:47】後袈裟丸山に到着。
後袈裟に着いたときの気持ちといったら言葉にできないほど嬉しかった。ココまでくれば遭難確率はほとんどなくなり、下山は時間の問題。

後袈裟丸山 ~ 群界尾根登山口

さて、後袈裟以降は前袈裟から小丸山(小袈裟)に抜ける方法もあったが、前袈裟と小丸山を登る体力は残っていないため、群界尾根コースから下ることにした。このコースは登山口から駅まで、3時間ほど林道を歩かなければならないが、とにかく今は体力を使わず水場にたどり着くことが先決。長時間の林道歩きも、登山口まで出ればなんとかなるだろうし。
急登を下りきると、八重樺原と呼ばれる原っぱに出る。八重樺原は、群界尾根コースの見どころスポット。このあたりまでくると写真を撮れるぐらい余裕が出てきた。
八重樺原以降は平坦な道を約1時間弱ほど歩く。喉がカラカラなので、途中で水場を期待したが、結局登山口に着くまで水場はなかった。
【15:50】群界尾根登山口に到着。
なんとか生きて帰ってこれた。結局この日は、登山口に着くまで誰にも会わなかった。

群界尾根登山口 ~ 小中駅

群界尾根登山口まできてようやく、夢にまで見た水場を発見。その場で1Lぐらいをがぶ飲み。生き返った~。

しかしココからは、長い長い林道歩きが待っている。林道を歩いていて知ったが、群界尾根登山口近くの道で土砂崩れが発生し、車両が通行止めになっていた。どおりで登山者が1人もいない訳だ..。

【17:06】折場登山口と群界尾根登山口の分岐地点に到着。
ココで本日初めて、犬を連れて散歩するおじさんと遭遇。長らく人と会ってなかったのでめちゃくちゃ嬉しかった。

次なる目的地は追付橋バス停。これまで通行止めで林道を走る車はゼロだったが、このあたりに大滝がありキャンプ場もあるので、後ろから車に追い抜かれること数回。誰か親切な人が声を掛け車に乗せてくれることを期待したが、残念ながら誰も声を掛けてくれず..。

【17:50】追付橋バス停に到着。
期待はしていなかったが、駅に向かうバスは早朝1本、夕方に駅から追付橋まで1本の1日1往復のみ。つまり、登山者用ではなく、このあたりに住む住民が街に出て帰ってくるためのバス。追付橋以降は暗くなったため、ヘッドランプを装着して林道を歩く。
【19:25】わたらせ渓谷鉄道の小中駅に到着。
なんとか終電20時18分の電車に間に合った。結局、登山口から3時間30分の林道歩き。疲れまくり..。でも生きて帰ってこれて良かった~。

関連レポート

袈裟丸連峰コースタイム

1日目

予定 実際 場所
09:00 09:00 沢入駅
10:30 10:41 塔ノ沢登山口
11:30 12:16 寝釈迦像
11:30~12:30 13:52 賽の河原
13:30 15:20 小丸山
13:40 15:38 避難小屋

2日目

予定 実際 場所
05:00 08:01 避難小屋出発
06:00 09:02~09:21 前袈裟丸山
07:00 10:09~10:24 後袈裟丸山
- 11:11 中袈裟丸山
08:15 13:30 袈裟丸山最高峰
- 16:54 緊急野営

3日目

予定 実際 場所
- 08:00 出発
- 08:34 法師岳
- 10:36 袈裟丸山最高峰
- 12:44 中袈裟丸山
- 13:47 後袈裟丸山
- 15:50 群界尾根登山口
- 17:12 大滝
- 17:50 追付橋バス停
- 19:25 小中駅

袈裟丸連峰の難易度

難易度

25/30

総合難易度
必要体力 体力難易度4
コース距離 コース距離難易度5
所要時間 所要時間難易度5
危険度 危険度難易度5

登山難易度 登山難易度6
小屋・水場 小屋・水場難易度4
アクセス アクセス難易度2

総合難易度 総合難易度8

登山DATE

  • 歩行距離:34.4km
  • 9/20歩数:24,588歩
  • 9/21歩数:15,796歩
  • 9/22歩数:32,815歩
  • 高度上昇:1,925m
  • 高度下降:2,064m
  • 出発高度:0,469m
  • 最高高度:1,961m

  • 標高の差:1,492m
  • 活動時間:26:22
  • 休憩時間:00:34

  • 合計時間:26:56
必要体力・距離

後袈裟から奥袈裟の標準コースタイムは1時間15分に設定されているが、行きも戻りも自分は約3時間ほどかかっている。これは荷物の重さだけでは説明しきれないほど大きな誤差。道が笹藪で覆われており悪路が多く、軽い藪漕ぎを行う場所もある。頻繁に小さな道迷いも発生するので、かなり時間の余裕をもって挑んだ方が良い。ただし、この区間でルートファイティングの技術は必要ない。

袈裟丸山最高峰以降は、尾根が広がり道がわかりにくくなるので、地図読みの技術が必要。法師岳以降は、背丈ぐらいの笹藪が広がる道なき道をルートを切り開きながら進まなければならないので、ルートファイティングと藪漕ぎの経験、地図読みなど総合的な技術がないと突破は難しい。このコースは一般的な登山の大原則、コースから外れ道に迷ったら、最後の目印まで戻るという、原則だけで登ると先に進めなくなる。このぐらいのレベルになると、装備として登山用GPSを持って行ったほうが良い。
危険度・水場
群界尾根から登る場合、水場は足尾山塊に抜けるまでないので、水の量は相当余裕をもって登らなければならない。当然ながら山小屋もないので、日帰り装備で登り、道に迷うと遭難する危険がある。 後袈裟、前袈裟までであれば、大した難易度ではないが、中袈裟・奥袈裟・法師岳まで行く場合は、技術・力量、持ち物・装備、スケジュールなど慎重に考えて挑んだ方が良い。管轄市区町村が跨る縦走路は、登山道の整備に消極的なので、道が廃れやすく、歩く場合には注意が必要。
アクセス
関東からのアクセスは良いが、基本登山口までのアクセスはマイカー前提のため、マイカーを持たない登山者にとってハードルが高い。登山口までバスがなく、林道を長く歩かされるだけで余計な体力を消耗する。
総括

今回勉強になったのは、山の険しさだけではなく、山の人気も難易度に影響すること。人気がない山は、人も少なく踏み跡が薄くなる、登山道が荒れる、管理が消極的になるなど、さまざまな観点から難易度が上がる。

法師岳近辺で緊急野営したときは、このまま遭難するかもしれないと本気で思った。翌日に無事下山して、家のベッドで寝られるなんて、その時はまるで信じられない出来事に思えたし。このコースに挑むには地図読み、ルートファイティングの技術など力量不足だったと反省。今回の件で、地図読みやルートファイティングの技術を磨こうと思うきっかけにもなったので、良い経験になったと思う。こういう経験はしようと思ってできるものではないので。

※なお、2016年5月6日にリベンジ登山していますので、関連記事「小法師岳登山レポ」からご確認ください。
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