[戸隠山登山レポ]
蟻の塔渡・剣の刃渡りに挑む、戸隠山登山!戸隠連峰縦走登山その1
2015年11月4日(水)天候:晴れ
戸隠神社奥社 ~ 蟻の塔渡 ~ 八方睨 ~ 九頭龍山 ~ 一不動避難小屋
戸隠神社奥社 ~ 蟻の塔渡 ~ 八方睨 ~ 九頭龍山 ~ 一不動避難小屋
- 戸隠連峰(とがくしれんぽう)
- 信越国境近く、戸隠地方にそびえる山脈の総称。一夜山から八方睨までを西岳、八方睨から一不動までを表山、一不動から高妻山を含む北端の乙妻山までを裏山と呼ぶ。
- 戸隠山(とがくしやま)日本二百名山花の百名山新花の百名山北信五岳
- 古くは修験道場や戸隠流忍者の里としても知られている標高1,904mの山。戸隠山の地質は凝灰角礫岩(ギョウカイカクレキガン)で、風化や崩壊が激しく、手がかりや足場にした岩が抜けやすい。また、コースは切り立った崖を登るため、上級者向けの山とされている。戸隠山の代名詞ともなっているのが蟻の塔渡、剣の刃渡りと呼ばれるナイフリッジ。いずれも切り立った岩の尾根で、滑落ではない墜落事故が毎年のように発生している。飯縄山、黒姫山、妙高山、斑尾山とともに、北信五岳(ほくしんごがく)のひとつに数えられる。
なお、戸隠連峰ガイドマップで、戸隠山の特徴を他の山と比較して、下記のように説明している。
戸隠連峰 | 北アなどの多くの山 | |
---|---|---|
心構え | 2,000m級だから甘く見る。しかし極めて特異で危険な山である。 | 3,000m級だから真剣に取り組む。困難だが普通の山である。 |
地質 | ・凝灰角礫岩(ギョウカイカクレキガン) 風化や崩壊が激しく、手がかりや足場にした岩が抜ける。岩場にとりつく前、靴底に泥がつまり滑りやすくなる。 |
・玢岩(ひんがん)、花崗岩など 比較的しっかりしていて、靴底のフリクション(摩擦)もきく。泥や土の部分が少なく滑りづらい。鎖や針金もしっかり固定されている。 |
事故 | 墜落。したがってほとんど即死。 | 転落、滑落。軽傷、重傷で助かることも多い。 |
戸隠山のコース
戸隠山の登山口は、戸隠神社奥社と戸隠牧場のみ。縦走が一般的でピストンする登山者は殆どいない。戸隠神社奥社から登って戸隠牧場に下山するのが最も一般的。なお、南西の西岳から縦走してくることも可能だが、西岳は戸隠山以上に全コース難路指定の難易度が高い山である。
- 戸隠神社奥社登り利用
- 戸隠神社奥社から百問長屋、蟻の塔渡、八方睨を経て、山頂を目指すコース。
- 戸隠牧場下り利用
- 戸隠牧場から一不動避難小屋、九頭龍山(くずりゅうやま)を経て山頂を目指すコース。
どうしても蟻の塔渡を回避して登頂したいなら、このコースのピストンとなるが、戸隠神社奥社に抜けるよりコース距離は長くなる。
戸隠山のコースが紹介されているのは、山と高原地図の「妙高・戸隠・雨飾」です。地図を持たない登山は危険ですので、必ず地図を持って登りましょう!
戸隠山の登山計画
- プラン
- 今シーズンの集大成として、上信越の戸隠山・高妻山の縦走登山を計画。前入りして、前日に飯縄山に登り、翌日に戸隠山・高妻山を一日で縦走する。11月で陽は短く、高妻山まで縦走するとコース距離は長くなるため、朝早いうちから出発することに。宿泊先は戸隠神社奥社に近い樅の木山荘。
- コース
- ヤマレコなどを参考に、戸隠山・高妻山の縦走を計画したが、樅の木山荘の奥さんから、11月は登る人も少ない上に、この2つの山を同時に縦走する登山者は殆どいないと言われ、事前に綿密な下調べしているとは言え、ちょっと不安になってしまった。
関連レポート
戸隠山コースレポート
戸隠神社奥社入口 ~ 戸隠神社奥社登山口
樅の木山荘を出発したのは4時15分頃で、当然ながら辺りは真っ暗。昨日調べた道順で戸隠神社奥社入口に向かう。樅の木山荘の朝食にりんごが付いていたので、りんごを噛じりながら歩いた。誰もいない山道を歩くが、真っ暗闇の神社って子供だったら泣いて逃げ出すほど不気味で怖い。特に怖かったのは狛犬。写真で見ると伝わらないが、結構でかくて威圧感が半端なかった。
【5:02】戸隠神社奥社登山口に到着。
登山口を無事見つけられるかどうか心配だったが、迷うことなく登山口に到着。ココから本格的な登山開始。
登山口を無事見つけられるかどうか心配だったが、迷うことなく登山口に到着。ココから本格的な登山開始。
戸隠神社奥社登山口 ~ 百間長屋
登山口から八方睨まで標準コースタイムは2時間20分。11月4日長野県の日の出は6時13分なので、1時間30分ほどは暗い闇夜を歩くことになる。
【5:58】ようやく地平線が赤く染まり始める。
ちょうど樹林帯を抜けたあたりで、明るくなり始めヘッドライトを外す。
ちょうど樹林帯を抜けたあたりで、明るくなり始めヘッドライトを外す。
【6:01】五十間長屋(ごじゅっけんながや)に到着。
岩がオーバーハングした形状。ビバークは無理っぽいが、雨宿りぐらいはできるスペース。
岩がオーバーハングした形状。ビバークは無理っぽいが、雨宿りぐらいはできるスペース。
【6:05】百間長屋(ひゃっけんながや)に到着。
五十間長屋から5分ほどで到着。百間長屋とは"何軒も長く棟の続いた長屋"という意味なので、この横に長くオーバーハングした岩場を長屋になぞらえているのだろう。先ほどの五十間長屋と比べてもスペースは広く、オーバーハングしている距離も長い。それにしても、薄暗いうちに見たせいか、岩がおどろおどろしく見えて、なんか不気味。
百間長屋 ~ 戸隠山山頂
西窟から少し進むと、ついに戸隠山の連続する鎖場がスタート。戸隠山の危険箇所と言えば蟻の塔渡は有名だが、それ以外の鎖場でも滑落事故は起きているため、ココから先はこれまで以上に気を引き締めて登る。なお、「凍結している岩」を踏むと、鎖を手放すほどの勢いで滑るため、絶対踏まないように細心の注意を払った。
途中に、垂直移動と平行移動の組み合わさった鎖場がある。この鎖場の平行移動は足場が細く、結構危ない。岩に、手がかりや足がかりとなるホールドはあるが、岩が抜けやすい性質を持つため、鎖もしっかり握って登る。
蟻の塔渡直前にあるほぼ90度の鎖場。ホールドはしっかりあるので、難易度は高くないが、万が一落ちたら確実に死ぬ。気持ちで恐怖が勝り、体がこわばると危険なので、気持ちを強く持って登る。技術よりも、気持ちで負けたら終わり。まさに精神力が試される山。
鎖を登り切った場所に「胸突き岩」と呼ばれる大岩がある。そして「胸突き岩」の手前に「清子さん安らかに眠れ。」と書かれたレリーフ。「めっちゃ怖~よ!」。故人を偲ぶ気持ちはわからないでもないが、これから戸隠山最大の難所、蟻の塔渡を渡る立場として見たくね~。
【6:41】蟻の塔渡に到着。
蟻の塔渡は、距離20mほどが、幅50cmほどに切り立ったナイフリッジ。両側は切り立った崖になっており、特に左側に落ちたらまず助からないだろう。鎖場の場合、鎖さえしっかり掴んでおけば、鎖が外れるなど特別な事がない限り、滑落することは100%ない。しかし、蟻の塔渡には鎖がなく、拠り所になるものがない。ただし、左右がナイフリッジになっていなければ、変哲のない道。昔、体育の授業でやった平均台よりも技術的難易度は低い。平均台と違って「落ちたら死ぬ」という違いだけで、ここも気持ちで負けたら終わり。
蟻の塔渡は、距離20mほどが、幅50cmほどに切り立ったナイフリッジ。両側は切り立った崖になっており、特に左側に落ちたらまず助からないだろう。鎖場の場合、鎖さえしっかり掴んでおけば、鎖が外れるなど特別な事がない限り、滑落することは100%ない。しかし、蟻の塔渡には鎖がなく、拠り所になるものがない。ただし、左右がナイフリッジになっていなければ、変哲のない道。昔、体育の授業でやった平均台よりも技術的難易度は低い。平均台と違って「落ちたら死ぬ」という違いだけで、ここも気持ちで負けたら終わり。
幅50cmとの情報だったが、意外と幅がある印象。傾斜はない。立って歩くことも決して不可能ではなく、自分は要所で立って歩いた。まあ、最悪四つ這いで進めば墜落する危険性は殆どない。個人差はあると思うが、個人的には1つ前の鎖場の方が怖かった。なお、蟻の塔渡には巻き道(迂回路)もあるが、巻き道は結構下る事と、その後の岩登りが逆に危ないとの意見もあり、あまりおすすめできない。現に巻き道の鎖場で滑落死亡事故も起きている。
蟻の塔渡を過ぎると、次は戸隠山最大の難所、剣の刃渡り。やや下り気味の傾斜があり、幅は蟻の塔渡より更に細く、距離は5mほど。しかし、左側の崖側に足を置ける場所があるので、そこを歩いて通過。さすがに真上を立って歩くのはキツイ。なお、剣の刃渡りに巻き道はない。
剣の刃渡りを超えると、八方睨までは目と鼻の先。八方睨は山頂と間違えられやすいが、戸隠山の山頂はもう少し先。
【6:59】八方睨(はっぽうにらみ)に到着。
八方睨は西岳からのコースとの合流地点。高台のようになっており、360度展望が効く。
八方睨は西岳からのコースとの合流地点。高台のようになっており、360度展望が効く。
難所を抜けたことで、ホッと一安心。お腹も減ってきたので、急ぎ戸隠山の山頂を目指す。八方睨からは稜線歩きとなり、目立った危険箇所はない。
【7:04】戸隠山の山頂に到着。
八方睨から5分ほどだった。時間は7時で、赤みがかった陽の光も消え、完全なる夜明け。戸隠山からは、戸隠地方一体を見下ろすことができる。ココで、樅の木山荘の朝食弁当を食べる。一般的な山小屋の弁当よりおかずも多く、味のグレードも高い。なお、この戸隠山の山頂に到着するまで、他登山者に会うことはなかった。
八方睨から5分ほどだった。時間は7時で、赤みがかった陽の光も消え、完全なる夜明け。戸隠山からは、戸隠地方一体を見下ろすことができる。ココで、樅の木山荘の朝食弁当を食べる。一般的な山小屋の弁当よりおかずも多く、味のグレードも高い。なお、この戸隠山の山頂に到着するまで、他登山者に会うことはなかった。
戸隠山 ~ 九頭龍山
【7:23】戸隠山を出発。
最初の中間目的地は、九頭龍山。地図から見てとれるが、九頭龍山経由の一不動避難小屋まで大きなアップダウンはない。稜線上を歩くため景色は良いが、東側(右側)斜面が切れ落ちているため、油断は大敵。まあ、よほどボッーと歩いていないかぎりは大丈夫だけど。
最初の中間目的地は、九頭龍山。地図から見てとれるが、九頭龍山経由の一不動避難小屋まで大きなアップダウンはない。稜線上を歩くため景色は良いが、東側(右側)斜面が切れ落ちているため、油断は大敵。まあ、よほどボッーと歩いていないかぎりは大丈夫だけど。
【8:10】九頭龍山(くずりゅうやま)に到着。
山頂スペースは登山道から少し東側に入ったところにある小スペースのため、ある程度山頂の場所を予測して歩かないと、見逃してしまうかも。ココでザックを下ろして少しだけ休憩。
山頂スペースは登山道から少し東側に入ったところにある小スペースのため、ある程度山頂の場所を予測して歩かないと、見逃してしまうかも。ココでザックを下ろして少しだけ休憩。
九頭龍山 ~ 一不動
九頭龍山まで来ると、高妻山がかなり大きく見えるようになる。九頭龍山以降も、引き続き稜線歩きだが、景色はこれまでより開けていない。九頭龍山から一不動までは少しアップダウンはあるが激しくはない。
【8:51】一不動に到着。
ようやくココからが高妻山山域の登山道。戸隠山の難所も無事クリアし、ここまで来れば五体満足で帰れる確率がグッと増すため、ホッと胸を撫で下ろす。一不動で本日初となる登山者と遭遇。結局、戸隠山では誰にも会うことなく貸し切り登山だった。
関連レポート
戸隠山コースタイム
予定 | 実際 | 場所 |
---|---|---|
04:10 | 04:15 | 樅の木山荘出発 |
05:00 | - | 戸隠神社奥社入口 |
05:40 | 05:02 | 戸隠神社奥社登山口 |
- | 06:05 | 百間長屋 |
07:50 | 06:41 | 蟻の塔渡 |
- | 06:59 | 八方睨 |
- | 07:04~07:23 | 戸隠山山頂 |
08:40 | 08:10 | 九頭龍山 |
09:40 | 08:51 | 一不動 |
戸隠山の難易度
15/30
総合難易度必要体力 | |
コース距離 | |
所要時間 | |
危険度 | |
登山難易度 | |
小屋・水場 | |
アクセス | |
総合難易度 |
登山DATE
- 歩行距離:6.5km
- 高度上昇:0,774m
- 高度下降:0,264m
- 出発高度:1,215m
- 最高高度:1,904m
- 標高の差:0,689m
- 活動時間:04:17
- 休憩時間:00:19
- 合計時間:04:36
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お気軽にどうぞ!
お気軽にどうぞ!
自分は蟻の塔渡よりも、その前にあった鎖場のほうが怖かった。ただ、この鎖場もホールドはたくさんあるので、岩が抜ける点に注意して進めば、技術的難易度は高くない。いずれの難所にせよ、気持ちで負け体がこわばると危険なので、気持ちだけは強く持って挑むこと。
その他、水場は一不動避難小屋から少し下ったところにあるのみで、高妻山まで縦走する場合、途中に水場はない。危険度が高い反面、登りだけで言えばコース距離も短く、体力的難所もないため、体力面での難易度は低い。
戸隠神社奥社から戸隠山の山頂まで、2~3時間見ておけば問題ない。ただし、戸隠神社奥社から登った場合、山頂から一不動避難小屋を経由して下山するまで時間はかかる。戸隠神社奥社からピストンすれば、短い時間で往復できるが、このコースをピストンする登山者は殆どいないだろうし。