[悪沢岳登山レポ]
赤石岳から縦走する荒川三山の悪沢岳!赤石岳・悪沢岳縦走登山その2
荒川小屋 ~ 中岳 ~ 悪沢岳 ~ 千枚岳 ~ 千枚小屋 ~ 椹島
- 荒川岳(あらかわだけ)
- 赤石山脈(南アルプス)中央部にある前岳、中岳、悪沢岳(東岳)の3つの山の総称。別名「荒川三山」とも呼ばれている。前岳(3,068 m)、中岳(3,084 m)、悪沢岳(3,141 m)と3つのピークで構成されており、三山のうち中岳と前岳は距離が近接している。中岳山頂近くには、中岳避難小屋(有人)がある。
- 悪沢岳(わるさわだけ)日本百名山
- 荒川岳の最高峰であり、日本で6番目、南アルプスで3番目に高い山。日本百名山を選定した深田久弥氏は、荒川岳ではなく、悪沢岳を日本百名山に選定している。山名は、山から流れる渓が急峻なことから、土地の猟師が悪沢と呼んだことが由来。
- 千枚岳(せんまいだけ)
- 悪沢岳の東に位置する標高2,880 mの山。山名の由来は、山頂付近に千枚岩が多く見られるため。千枚岩は、葉片状にはがれやすいため古代では、矢じりに使われた石。
悪沢岳のコース
- 千枚尾根下り利用
- 南の椹島から、千枚小屋、千枚岳を経由して悪沢岳に登るコース。途中にある千枚小屋に一泊するのが一般的で、縦走を除けば最もスタンダードなコース。ただし、千枚小屋まで樹林帯の登山道を約6時間30分歩かなければならず、この長い樹林帯歩きが本コース最大の特徴にもなっている。
- 二軒小屋コース
- 東の二軒小屋から、マンノー沢の頭や千枚岳を経由して悪沢岳に登るコース。二軒小屋には二軒小屋ロッジがあり、薙畑第一ダムからバスも出ているが、バスを利用するには、二軒小屋ロッジに宿泊しなければならない。二軒小屋ロッジ宿泊という条件があるため、利用者は少ない。
- 小渋川コース難コース
- 北西の大鹿村(湯折)から小渋川沿いを登り、広河原小屋(無人)へ。広河原小屋から尾根を登り、大聖寺平、荒川小屋を経て悪沢岳を目指すコース。広河原小屋までは登山道のない河原を遡行し、標高差も2,051mあるため、上級者向けコースとされており、利用者は極端に少ない。 しかし、ガイドブックによると紅葉時期は渓谷美が素晴らしいとのこと。公共交通機関でのアクセス手段はないため、マイカー必須となる。
悪沢岳・悪沢岳縦走登山の登山計画
- 計画概要
- 当初、山の日の3連休を予定していたが、天候が思わしくなかったためリスケにして挑んだのが今回の登山。
- コース
- 椹島から時計回りの縦走で、当初は1日目は赤石小屋、2日目は中岳避難小屋を予定していた。しかし、1日目に赤石岳山頂の赤石岳避難小屋まで足を伸ばしたため、2日目は中岳避難小屋ではなく、千枚小屋宿泊に予定を変更した。
関連レポート
悪沢岳コースレポート
荒川小屋 ~ 中岳
【9:02】荒川小屋を出発。
まずは、荒川三山の中岳を目指す。荒川小屋から少し進んだ場所で、昨日椹島でお会いして千枚小屋から反時計回りしているKさんとすれ違う。靴のソールが剥がれたことを話すと、さらに結束バンド2本を譲っていただくことに。この結束バンド2本が明日3日目の下山時に大活躍したので、改めて感謝です。
標柱のある小広場からは本格的な上りとなる。ココまでそれほどキツイ登りではなかったが、引き続き剥がれかけたソールを補佐する紐が、数分ごとにほどけるため、かなりのストレス。
【10:32】稜線の分岐に到着。
ココまでさらっと書いているが、それなりにしんどかった。
滞留している登山者は1組のみ。中岳からの展望も良いが、あくまで通過点としての山なので、10分ほど休憩して悪沢岳(東岳)へ向け出発。
中岳 ~ 悪沢岳(東岳)
鞍部から山頂までの標準コースタイムは1時間。傾斜はこれまで以上に急だが、傾斜が急な分どんどん標高を稼げるし、またこの上りが今回の登山における最後の上りとなるため、精神的には楽。
ただし、この区間でもソールの剥がれかけた靴が足を引っ張る。ソールを縛る紐が、靴の前方に少しずつずれてほどけるため、中岳手前から紐が前方にずれる度に指で紐を後方にずらす作業を、行いながら登っていた。しかし、指の先に負担がかかっていたようで、悪沢岳の上り途中で指の爪から出血。指を変えるなどして対応したが、結構厄介だった。悪沢岳山頂
ちょうどシニアの団体とかち合ってしまい、到着直後の山頂は賑わっていたが、シニアの団体がいなくなると、登山者は2~3人となり山頂は寂しげな雰囲気。山頂スペースはそこそこ広く収容キャパは十分あるが、登山者が少ない山域なので、山頂が人で溢れかえるということはなさそう。また、日帰りできる山ではなく、登山者の殆どは荒川小屋、千枚小屋、中岳避難小屋、赤石岳避難小屋のいずれかに宿泊しているため、登頂する時間にもバラツキがあると思われる。
あとは、2時間弱ほど歩き千枚小屋に下るだけなので、悪沢岳の山頂でゆっくりすることに。途中、中岳避難小屋で連泊しているおじさんや、千枚小屋のアルバイトスタッフ(休憩時間を利用して登ってきたらしい)、トレランの人が登ってきたので、会話などして過ごす。ちなみにこのトレランの方、鳥倉登山口から登り、三伏峠・塩見岳・蝙蝠岳・二軒小屋・悪沢岳・小河内岳・三伏峠・鳥倉登山口の周回コースを1日で回るらしい。標準コースタイムで計算すると総時間36時間20分と、トレランとはいえありえないコース距離に脱帽。悪沢岳(東岳) ~ 丸山
まずは目の前に見える、丸山に向かう。丸山手前にはがレ場があり、一部岩を飛び越えるような場所もあり、少し注意が必要。それにしても、目で見てはっきりわかるほどの赤色で、赤石岳より赤い岩が多い。
悪沢岳山頂から丸山は見えていたのですぐに到着するイメージだったが歩くと結構距離があった。すでに霧で視界はほとんどないため、そのまま通過。
丸山 ~ 千枚岳
千枚岳から千枚小屋は目と鼻の先。早く小屋についても時間を持て余すだけなので、時間調整のため休憩をとる。
千枚岳 ~ 千枚小屋
もう少し休憩しても良かったが、霧で展望はきかないため20分ほどで出発。千枚岳から少し下ると標柱があり、そこから樹林帯に入る。なお、千枚小屋で泊まる場合、ご来光は千枚小屋からも見られるが、余裕があれば千枚岳まで登って見るのがベスト。(千枚小屋の主人談)
千枚小屋
【15:18】千枚小屋に到着。
宿泊手続きを本館で済ませる。このとき、シュラフを持参していたため寝具なしで500円割引されるが、部屋は本館ではなく別館の百枚小屋を案内される。どうやら寝具持参の登山者は別館に案内されるようだ。千枚小屋には本館以外に別館が月光荘と百枚小屋と2つあり、月光荘はツアーで専有されていたので、必然的に百枚小屋へ。
明日に備え、靴の応急処置をするため、結束バンドを再利用することに。ネットで調べると再利用するためにはマイナスドライバーが必要とのことだが、さすがにマイナスドライバーはない。仕方なくナイフで代替えしていたところ手を滑らせて右手中指を損傷。就寝時間になっても血が止まらず、結局トイレットペーパーを幾重も指に巻いて寝ることに。本当はお酒を飲む予定だったが、血が止まらないのでお酒も飲めず。(T_T)
さらに百枚小屋に関して1つ苦言。シュラフは3シーズン用なのに、夜めっちゃ寒かった。本館にはストーブが2基も設置されていたが、別館にストーブはない。寝具なしで値引きは嬉しいが、小屋は離れた別館で、ストーブもなしってなんか冷遇されている感じ。もし、シュラフが夏用だったり、寒いのが苦手な方は、シュラフ持参でも寝具付きにして本館に宿泊したほうが良い。
翌日は4時30分起床。
当初は、千枚岳まで登ってご来光を拝む予定だったが断念。その理由は、夜寒くて熟睡できなかったこと、2日間の登山で疲れていたこと、靴のソールの応急処置を1度施すと登山靴を脱げなくなってしまうこと、日焼けで顔が腫れ上がり早朝にコンタクトレンズが目に入らなかったこと、諸々悪条件が重なり、千枚岳からのご来光は断念。前日はガスっていたので、それをチャラにする意味でも千枚岳からご来光を見ておきたかったが、まあ仕方がない。
千枚小屋 ~ 見晴台
同じ百枚小屋の宿泊者だが、夫婦は日の出前に出発、昨日から一緒だった方も椹島10時30分発のバスに乗るため、日の出後すぐに出発。シニア登山者も既に出発していたため、小屋にポツンと1人だけ。畑薙第一ダムから14時20分発の高速バスを予約していたため、13時椹島発のバスに乗ればよく、早く着いても意味がないため、ゆっくり身支度を整える。
【6:28】千枚小屋を出発。
自分が出発するとき、小屋のスタッフさんが小屋前で休憩していたので、登山者の中で一番遅い出発だったかも。靴の応急処置は、昨日ナイフで手を切ってまで準備しただけあって完璧。[靴の応急処置状況
]昨日の紐とは異なり、下山までソールを保護している結束バンドがずれることもなく、快適に歩くことができた。
【6:52】標柱のある小広場(駒鳥池分岐)に到着。
今回の登山で最も悔やまれるのが、駒鳥池を見忘れてしまったこと。この標柱のある小広場から少し下ると駒鳥池と呼ばれる、ひっそりとたたずむ池がある。この駒鳥池は神秘的な雰囲気が評判で、事前にNHK「にっぽん百名山」でガイドさんが紹介している映像をチェックしていたにも関わらずスルーしてしまう。写真をよく見ると、左側に「駒鳥池」と書かれた標識が見え、何故気付けかなかったのか悔やまれる。
標柱のある小広場以降も、樹林帯の道。たまに、南アルプス一体を所有する特種東海フォレストのうんちく板が設置されている。明治時代、土地の所有者だった「大倉喜八郎」氏は豊富な森林資源・水資源に着目し、東海パルプ(株)管理の元※、この辺り一帯で林業を盛んに行ってきた歴史がある。その林業で切り出した木材を運ぶための木馬道に関するうんちく板。
※かつて存在した特種東海フォレストの関係会社。【7:41】見晴台に到着。
登山道外に踏み跡があったの興味本位で進んでみたところ見晴台に到着。この見晴台も地図ではポイントになっているので「あれ?」って感じ。この見晴台は、本コース唯一と言って良い展望のきく場所。霧でわかりにくいが、悪沢岳を含む荒川三山が遠くに見える。
見晴台横には林道があり、これが例の千枚小屋近くまで伸びる管理道路。確かにマイクロバスぐらいなら登っていけそうな道。
また、見晴台前後から、登山道にきのこが目立ち始める。赤石岳の東(大倉)尾根もそうだったが、南アルプス南部の標高2,000mあたりはきのこが自生しやすい環境なのかも。見晴台 ~ 清水平
千枚尾根上にある貴重な水場。千枚尾根は、登山口の滝(後に紹介)、清水平、千枚小屋と、一定間隔で水場があるので、水調達の観点では恵まれている。
清水平 ~ 小石下
緩やかなピークになっているため、手前で少し上りもあるが、大したことはない。時間に余裕もあるためココで10分ほど中休憩。
小石下 ~ 鉄塔横
小石下以降も、暫くは緩やかな傾斜の登山道。この区間、木々の隙間から林道がちらほら見える。地図を確認すると先ほど林道を横切った地点から、林道と登山道がほぼ並行しており、どちらを歩いても問題なさそうに思える。
その後に出てくる、傾斜が急でジグザグに伸びる道を下れば、林道に到達。すぐに登山道に戻されるが、少し進むと岩頭と呼ばれる岩稜地帯が現れる。岩頭以降も想定外に、両手足を使って登るような場所もあり、この期に及んで汗だく。
山と高原地図で、次のポイントは鉄塔横となっているが、その手前に鉄塔下という箇所もあり。この場所でコースは右に90度曲がっていたので、地図と照らし合わせると、おそらく鉄塔下かと思われる。しかしその後、鉄塔を見かけることはなかったので、結局鉄塔横という地点はわからずじまい。
鉄塔下 ~ 千枚岳登山口 ~ 椹島
登山口が近いと感じてから意外と距離があり長く感じたが、ようやく到着。
10時30分のバスが出たばかりで、次のバスは13時のため2時間も余裕あり。「椹島 Resthouse」の裏に気持ちの良い草原があるため、そこで食事をしたり、川に下りて水に足をつけて涼んだりして時間を潰した。
関連レポート
悪沢岳のコースタイム
2日目
予定 | 実際 | 場所 |
---|---|---|
- | 09:02 | 荒川小屋 |
- | 09:40 | 標柱 |
03:30 | 10:42~10:52 | 中岳(避難小屋) |
05:00~06:00 | 12:01~13:30 | 悪沢岳 |
06:25 | 13:58 | 丸山 |
07:05 | 14:36~14:50 | 千枚岳 |
07:35 | 15:18 | 千枚小屋 |
3日目
予定 | 実際 | 場所 |
---|---|---|
07:45 | 06:28 | 千枚小屋出発 |
08:20 | 06:52 | 標柱のある小広場 |
09:05 | 07:41 | 見晴台 |
09:45 | 08:28 | 清水平 |
10:40 | 09:22 | 小石下 |
11:40 | - | 鉄塔横 |
12:20 | 10:48 | 千枚岳登山口 |
12:35 | 10:58 | 椹島 |
13:00 | 13:00 | バス乗車 |
悪沢岳の難易度
20/30
総合難易度必要体力 | |
コース距離 | |
所要時間 | |
危険度 | |
登山難易度 | |
小屋・水場 | |
アクセス | |
総合難易度 |
登山DATE 2日目
- 歩行距離:11.02km
- 登山歩数:22,410歩
- 高度上昇:0,734m
- 高度下降:1,197m
- 出発高度:3,121m
- 最低高度:2,565m
- 標高の差:-0,556m
- 活動時間:04:23
- 休憩時間:01:53
- 合計時間:06:16
登山DATE 3日目
- 歩行距離:12.04km
- 登山歩数:20,876歩
- 高度上昇:0,146m
- 高度下降:1,647m
- 出発高度:2,565m
- 最低高度:1,123m
- 標高の差:-1,442m
- 活動時間:04:30
- 休憩時間:00:00
- 合計時間:04:30
お気軽にどうぞ!
赤石岳・悪沢岳の縦走は、時計回りか、反時計回りかで悩む人も多いと思うが、スケジュール的には反時計回りの方が無難。2泊3日前提の話だが、時計回りの場合、初日の宿泊は赤石小屋か、赤石岳避難小屋だが、いずれに泊まったとしても、スケジュールのきつい日程が必ず1日できてしまう。
参考までに、反時計回りの場合は、下記スケジュールが定石。
南アルプス南部へのアクセス自体は悪いが、山域に入ってしまえば、山小屋や水場に恵まれており、縦走する環境には恵まれている。椹島から赤石岳へは登り応えがあり、赤石岳から悪沢岳までの稜線歩きは、景色にお花畑と見応えがある。アクセスの悪さを差し引いても、価値の高い山登りでした。椹島 ~ 千枚小屋 ~ 赤石岳避難小屋 ~ 椹島