[和名倉山登山レポ]
遭難多発?原生林が残る奥秩父の秘峰!和名倉山登山 奥秩父縦走登山その2
将監小屋 ~ 西仙波 ~ 東仙波 ~ 和名倉山 ~ 秩父湖
- 和名倉山(白石山)(わなくらやま・しろいしやま)日本二百名山
-
埼玉県秩父市にある標高2,036mの山。和名倉山は埼玉側の呼び名で、山梨側からは白石山と呼ばれている。ガイドブックなども含め、一般的に和名倉山の名称が使用されることが多い。
奥秩父の秘峰といわれており、奥秩父の中でも美しい原生林が残る山。戦前まであった米ツガの原生林の大半は1950~60年代にかけて火災で消失。その後、シカの食害などもあり荒廃が進み、登山者の足も遠のいていたが、2000年以降、森林の再生が進み、かつての美しい原生林が戻ってきているといわれている。 奥秩父の主縦走路から外れていることもあり、並列する雲取山の尾根に比べ登山者は少ない。特に、秩父湖から登る二瀬(ふたせ)のルートにおいて、登山道のわかりにくい箇所が多く、遭難が多発する山とされていたが、2010年以降は登山者の数も増え、登山道も整備されたことで、かつてほど難しい山ではなくなってきている。
和名倉山のコース
一般的には、南の将監峠から登るか、北の秩父湖から登るかの2パターン。西の川又からヒルメシ尾根沿い、東の雲取林道から仁田小屋尾根沿いに登ることも可能だが、一般ルートとはされておらず、山と高原地図では記されていない。
また北東のナシ尾根からの登ることも可能だが、ヒルメシ尾根、仁田小屋尾根以上にマニアックなルートで、ガイドブックにも全く触れられていない。しかし、ネットで調べると、ごく少数ながら登っている人もいるようだ。- 仙波尾根登り利用人気コース!
- 南の将監峠から仙波尾根沿いに西仙波、東仙波を越えて山頂を目指す。最も利用者が多いコース。
- 二瀬尾根下り利用難コース
- 北の秩父湖から二瀬尾根沿いを南に向かって進む。山と高原地図では破線ルートの難コースで描かれている。
- 仁田小屋尾根難コース
- 東の雲取林道から仁田小屋尾根沿いに登るコース。
- ヒルメシ尾根難コース
- 西の川又からヒルメシ尾根沿いに登るコース。事実上廃道となっており、登るならルートファイティングの技術が必要。
関連レポート
和名倉山の登山計画
- プラン
- 去年ルートファイティングの技術がなく敗退した、皇海山・袈裟丸山登山に向け前哨戦に位置づけた和名倉山。秩父湖からの二瀬尾根ルートはコース不明瞭な箇所が多く、身につけたルートファイティングの技術を試すことが目的。
- コース
- 二瀬尾根を下りで利用することにして、前日に将監小屋まで移動して宿泊する1泊2日の計画を立てた。
和名倉山コースレポート
将監小屋 ~ 山ノ神土
【04:30】起床。
将監小屋の食事は5時。食事を済ませ、出発準備を整える。
【05:53】出発
グズグズしていたので、後発組としてスタート。まずは笠取山と和名倉山の分岐地点である、山ノ神土(やまのかみつち)に向かう。なんか、語呂が悪く舌噛みそうな名前だし。
前後を歩いていた登山者は笠取山へ向かい、和名倉山へ向かうのは自分一人。和名倉山は二百名山なのに人気がないのかな..。また、いつもの如く孤独な登山となる予感。山ノ神土から本格的な和名倉山への上りとなるため、上着を脱ぐなどして準備を整える。
山ノ神土 ~ 西仙波
【07:06】西仙波に到着。
西仙波からの展望はそれほど良くない。
西仙波 ~ 東仙波
【07:26】東仙波に到着。
東仙波から南側の写真が残っていなかった。記憶は曖昧だが、写真撮影するほどの景色ではなかったのかも。
東仙波 ~ 川俣分岐
特に疲れてもいないので、東仙波では休憩をとらずにそのまま、北に方角を変えて歩き出す。東仙波から本格的に和名倉山へのアプローチルート。一先ず、廃道となっているヒルメシ尾根への分岐地点である川俣分岐を目指す。
東仙波から少し下って登り返した後は、引き続き緩やかな上り道で、登山道の左右(東西)も開けており、開放感のある山歩きが続く。川俣方面に伸びるヒルメシ尾根は、ガイドブックに「廃道」と書かれていたが、このヒルメシ尾根から登った何人かのコースレポートを見てみたが、道さえわかれば今でも登れなくはなさそうだった。
川俣分岐 ~ 二瀬分岐 ~ 和名倉山
川俣分岐から二瀬分岐を通過し和名倉山を目指す。
二瀬分岐の手前に平地があり、そこからコース外を東へ進めば水場がある。この平地でテントを張っている登山者1名。なるほど!水場が近くにあるのだから将監小屋ではなくココでテントを張るのもあり。でも、過去に遭難事故も多かった山だし、夜はめっちゃ怖そうだけど..。【08:44】二瀬分岐に到着。
この二瀬分岐に「ここまできていまさらですが・・・家族に伝えたか?」という貼り紙があった筈だが、なくなっていた。貼り紙を見た登山者が皆「いまさらかい!」というツッコミを入れていたのでちょっと楽しみにしていたのに残念..。
【08:59】和名倉山の山頂に到着。
事前情報通り、和名倉山の山頂からの眺望はなし。しかし、山頂周辺には、和名倉山を象徴する原生林が広がっており、ある意味、中途半端な展望より、よほど魅力的。陽の光が森に差し込むと、なんとも言えない神秘的な光景。反面、曇りや雨の場合、恐ろしく不気味な森に変貌するだろう。そう言えば、同じ秩父の甲武信ヶ岳でも原生林っぽい場所があったので、奥秩父にはこのような森を育む環境要因があるのかもしれない。和名倉山の場合、何故か山頂周辺だけだが、その他は火事で消失してしまったのか..。
和名倉山の山頂 ~ 二瀬分岐 ~ 北のタル
【09:32】和名倉山を出発。
ココまで行動を共にしてきた方も同じく秩父湖に下山する上、過去に秩父湖から登った経験があるとのことで、引き続き付いていくことにした。GPSは持参しているものの、登山経験が自分より豊富な方なので、1人より2人の方が心強いし。
北のタルは小広場のようになっており、一瞬どこに進めば良いか悩んだが、地図を見ると、コースは北東に曲がっているため、北東方面をよく見るとピンクリボンの目印発見。この場所は霧が出ていたりすると、わかりにくいかもしれないが、コースが曲がっているポイントさえ把握していれば、まあ大丈夫。
北のタル ~ 造林小屋跡
一先ず次なる目的地は造林小屋跡。その途中に何人もの登山者を道迷いに追い込んだ、悪名高き藪笹地帯を通過しなければならない。
その悪名高き藪笹地帯だが、藪笹が全て枯れてました。どうやら、一部の笹において、ある周期で開花し、その後一斉に枯れることが確認されているらしい。その周期は長く60~120年とかなりアバウト。つまり、その長ーい周期の中で唯一枯れているタイミングに出くわした。(汗)運が良いのか悪いのかよくわからん体験です。
まあ、そのようなこともあって、道はわかりやすいです。そもそも枯れていなかったとしても、コース上の藪笹は刈り取られ整備されていたため、道迷いの要素は解消されていた。
造林小屋という名前の通り、林業が盛んだった頃、ココに林業用の小屋が建っていた場所。最盛期には、数十人規模の林業従事者がいたと思われる。その名残で、小屋周辺には錆びたレール、滑車、車輪、ワイヤーなどから、鍋、釜、バケツ、一升瓶の残骸が散乱している。あまりにも古いゴミのため、もはや汚いというよりも風情が感じられる。今時、透明の酒瓶なんてサザエさんぐらいでしか見かけないし。
造林小屋跡地 ~ 反射板跡地
おそらくココが森林鉄道の終点。ココからワイヤーや滑車を使って木を麓まで下ろしていたのだろう。景色はそれほど開けていない。食事をとっていなかったので、今更ながらココで食事。
反射板跡地 ~ 秩父湖
【12:24】反射板跡地を出発。
話は変わるが、三峯神社で毎月1日限定で販売される白いお守りがあり、そのお守り目的で、周辺道路で大渋滞が発生するらしい。しかもこの日は、GWと重なっているし、いつも以上の渋滞が予想される。同行していただいている方がかなり気にしていたので、早めの下山を心がける。
秩父湖の吊橋を渡ってしばらく進むと、埼玉大学秩父山寮の脇から県道278号線に出る。
ココから、秩父湖バス停までの歩いて20分ほど。県道278号線は予想通りの大渋滞。かと思いきや、バス停のある二瀬ダムから国道140号線に出ると渋滞も解消。二瀬ダムを渡る道が1斜線のため、時間差で上り下りが切り替わる通行規制が渋滞の原因だった。
【13:35】秩父湖バス停近くの駐車場に到着。
バスの時間が気になるので、同行している方に尋ねてみたところ、なんと車できて秩父湖近くの駐車場に駐車しているとのこと。しかも、隣の沿線ではあるが、自宅がかなり近いこともあり、厚かましくも最寄り駅まで送ってもらえることに。筑波山でも同じく知りあった方に近くの駅まで送っていただいたことはあるが、まさか自宅の最寄駅まで送って頂けるとは大変感謝。
関連レポート
和名倉山のコースタイム
予定 | 実際 | 場所 |
---|---|---|
06:00 | 05:53 | 将監小屋出発 |
06:25 | 06:15 | 山ノ神土 |
07:55 | 07:26 | 東仙波 |
09:15 | 08:32 | 川又分岐 |
09:30 | 08:44 | 二瀬分岐 |
09:50~10:20 | 08:59~09:32 | 和名倉山 |
10:40 | 09:42 | 二瀬分岐 |
10:55 | 09:57 | 北ノタル |
12:30~13:15 | 11:07 | 造林小屋跡 |
14:05 | 11:46~12:24 | 反射板跡地 |
15:25 | 13:19 | 埼大山寮 |
15:45 | 13:35 | 秩父湖バス停 |
15:55 | - | バス乗車 |
和名倉山の難易度

14/30
総合難易度必要体力 | ![]() |
コース距離 | ![]() |
所要時間 | ![]() |
危険度 | ![]() |
登山難易度 | ![]() |
小屋・水場 | ![]() |
アクセス | ![]() |
総合難易度 | ![]() |
登山DATE
- 歩行距離:17.96km
- 登山歩数:29,975歩
- 高度上昇:0,799m
- 高度下降:1,986m
- 出発高度:1,795m
- 最高高度:2,036m
- 最低高度:0,543m
- 標高の差:-1,493m
- 活動時間:06:31
- 休憩時間:01:11
- 合計時間:07:42
お気軽にどうぞ!
秩父湖から登る場合、反射板跡地に出るまでと、造林小屋跡からの登りが、相当キツそうな急登だったので、登るなら覚悟が必要。
景色は殆ど期待できないと聞いていたが、仙波尾根から広がる景色は素晴らしかった。和名倉山に近づくにつれ展望は尻窄みになっていくが、逆に映画「もののけ姫」に出てくるような原生林の森を楽しむことができる。和名倉山の山頂一帯のみ、苔むすの森になっており、この現象はなんとも不思議。メインは山頂付近のみだが、北のタルまでは、その原生林の片鱗を楽しみながら歩くことができる。
また、秩父湖からの二瀬コースは林業が盛んだった頃に捨てられたであろうゴミが散乱していて汚いとも聞いていたが、森林鉄道軌道跡とセットで見ると、見方によっては文化遺産と捉えられなくもない。過去に遭難が多発していた秩父湖からの二瀬尾根のコースだが、現在は登山道もわかりやすく、目印も多いため、道迷いの要素は殆どない。普通のコース以上に目印が多かったので、近年目印を増やしたのだろう。あえて挙げるなら、秩父湖近くの雑木林で、森林管理用の目印と登山道の目印が散見しているので、下りはともかく秩父湖から登る場合、秩父湖から反射板跡地に出るまでの道は要注意。
ガイドブックには、二瀬分岐と北のタルの間、それと山頂から見て造林小屋跡の手前でコース不明瞭と書かれていたが、迷うことなく普通に通過。過去には、沢登りの人達が勝手に付ける目印で、和名倉沢に迷い込んでしまう登山者も多かったようだが、今回歩いていて、そのような紛らわしい目印もなかった。 また、道迷いの代名詞ともなっていた背丈ほどの藪笹が全て枯れていた上に、コース上の藪笹も刈り取られるなど、諸々含め、遭難が多発していた時期と状況が一変していると思われる。山と高原地図では破線で示される難コースとして記されているが、実線にしても良いレベル。
水場に関しては、造林小屋跡、二瀬分岐、山ノ神土と良い間隔で水場があるため、水場には恵まれている。道迷い以外の危険要素となる、岩場や鎖場などもない。