[岩手山登山レポ]
焼走りコースから登り七滝コースで下山する岩手山登山
焼走り登山口 ~ 岩手山 ~ 御苗代湖・御釜湖 ~ 七滝登山口
- 岩手山(いわてさん)日本百名山
- 岩手県の北西部に位置する、二つの外輪山からなる標高2,038m(岩手県の最高峰)の火山で、県のシンボルの1つとして親しまれている。山頂外輪を取り囲むように石仏が祭られるなど、古来より山岳信仰の対象でもある。現在も気象庁による火山観測の対象となっており、1731年の噴火では、北東山麓に溶岩流が発生し、現在は「焼走り熔岩流」と呼ばれ、国の特別天然記念物に指定された。また、山頂付近には「コマクサ」の群生地があり、開花時期の6月下旬頃にはコマクサのお花見目的で、多くの登山者が登っている。
岩手山のコース
岩手山は山頂から東西南北にコースが伸びており、代表的なコースは合計7つ。1つ登山口に対して1つのコースが存在しており、コースとしては比較的わかりやすい。コースの詳細は「十和田八幡平国立公園」のホームページで詳しく紹介されている。
盛岡駅からバスが出ているのは、松川登山口と七滝登山口だが、登山開始が9時頃となるため、山中で宿泊する場合でなければ利用は難しい。多くの登山者は柳沢登山口か焼走り登山口にマイカーかタクシーで、早朝にアクセスして登っている。- 上坊登山口 → 上坊コース (4:00)
- 馬返し登山口 → 柳沢コース (4:25)
- 御神坂登山口 → 御神坂コース (4:40)
- 焼走り登山口 → 焼走りコース (5:10)
- 七滝登山口 → 七滝コース (5:50)
- 網張登山口 → 網張コース (6:05)
- 松川登山口 → 松川コース (6:10)
※ 網張コースは、標高1,320mまでリフトを利用できる
- 柳沢コース人気コース!
- 馬返し登山口から登るコース。古くから信仰登山の表参道として使われた岩手山の代表的なコース。
8合目では御成清水と呼ばれる水場があり、夏期は管理人が常駐する避難小屋もコース上にある。
- 焼走りコース登り利用人気コース!
- 焼走り登山口から登るコース。登山口に焼走り熔岩流があり、溶岩流を見たいならこのコースとなる。コース上にある2つの噴火口跡からの眺望も優れている。
また、6月下旬が見ごろとなる、日本有数のコマクサ群落地がある。
- 七滝コース下り利用
- 県民の森にある七滝登山口から登るコース。登山口近くに、落差20mを越える七滝がある。
七滝以外に、蒸気が吹き出す大地獄谷、湿原のお花畑、火口湖(御苗代湖・御釜湖)など、見どころが多いコース。
岩手山の登山計画
- プラン
- 当初は9/22~9/23で北アルプスを予定していたが、天候が悪そうだったため、セカンドプランとして用意していた岩手遠征に急遽切り替えた。時間がなかったため、9/20の深夜バスと9/21の宿泊先だけ予約して東京を出発。9/21~9/24まで夏季休暇で休みだったため、9/21は岩手山に登り、22日は八幡平へ、23日以降のことは行ってから考えることにした。
- コース・アクセス
当初は、滝沢駅からタクシーで馬返し登山口にアクセスし「柳沢コース」から登る予定だったが、夜行バス内で岩手山のことを色々調べてみると、溶岩流が見たくなったので、当日の朝に焼走り登山口から登る「焼走りコース」に変更。そのため、滝沢駅ではなく、花輪線の大更駅からタクシーでアクセスした。(ちなみに焼走りコースの方が標準コースタイムは1時間ほど長く、電車の関係で登山開始時間も遅くなる)下山は、八幡平温泉郷に宿を予約したため「七滝コース」から八幡平温泉郷に近い七滝登山口に下山する。
なお、いつもは詳細なスケジュールを作成して持参しているが、作成する時間がなく、今回は細かなスケジュールを組まないで挑んだ。- 荷物
- 宿泊予定の宿は山小屋ではないため洗濯は可能だが、それでも2日分の着替えや最低限の食事は持って登らなければならない。少しでも荷物の軽量化を図るため、今回はストックを持参しなかった。しかし、ストックがないことで、のちのち苦しむことになる。
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岩手山コースレポート
焼走り登山口 ~ 第2噴出口跡
【7:50】焼走り登山口に到着。
配車予約はしていなかったが、大更駅前で客待ちのタクシーに乗車できました。焼走り登山口にはトイレに自販機もあり。登山口近くに溶岩流観察路もあるので、出発前に少しだけ寄る。
登山口から15分ぐらいはほぼ平坦な道だが、その分距離は歩かされる。ちなみに、溶岩流の真横を登山道が伸びている。
第2噴出口跡から、焼走溶岩流を上から見下ろすことができ、反対側を向くと岩手山の山頂付近が見える。異常に疲れたため、20分ほどココで休憩。それにしても、第2噴出口跡のお地蔵さんの表情がとっても悲しそうです..。
第2噴出口跡 ~ ツルハシわかれ
次は、第1噴出口跡を目指す。道的にはこれまでと大差はない。ただし、第1噴出口跡の近くから地面がサラサラした細かい砂のような性質に変わり始め、この砂に後ほど苦しめられることになる。
第2噴出口跡のように吹き出した溶岩はなく、展望台のようになっていた。
ココは上坊コースとの合流地点。小休憩のつもりで岩に腰掛けたところ、疲れと眠気で意識が飛んでしまい、気づいたら15分ぐらい経過してました..。
ツルハシわかれ ~ 平笠不動
このままココでジッとしていたい気分だったが、気持ちを奮い立たせて出発。次なる目的地は、平笠不動にある避難小屋。途中に「三十六童子」という祠のある場所を通過する。
不動明王を手助けする眷属(けんぞく)。その名を唱えれば悪霊は退散し、崇拝する者を守護し、長寿をもたらすとされている。
平笠不動は岩手山の七合目。平笠不動避難小屋があり、中を覗いて見たがきれいな避難小屋だった。[平笠不動避難小屋内部]
平笠不動 ~ 岩手山の山頂
山頂までの標準コースタイムは40分。ただし、目で見てわかるとおりココからは急登となる。
急登なのでグングン高度が上がっていき、途中で後方を振り返ると素晴らしい眺望。ただし、急登なので体力的にはかなりキツイ..。この区間もストックがあった方が確実に登りやすい。
12時を過ぎて山頂まであと少しの地点で、一瞬にしてあたり一面霧に覆われ真っ白に。ガーン( ̄Д ̄;) 悪い予感が的中..。でも、ここまできたからには、ひとまず山頂を目指す。真っ白な世界で、しかも極寒。汗で湿ったシャツを着替えようと思ったが、風が強すぎて断念。しかも、手袋を忘れてしまう痛恨のミス。しかし、ホッカイロは持ってきていたので、ここぞとばかりに使ってみたが、あまりの寒さにホッカイロが生ぬるい..(汗)20分ほど滞在していたが、これ以上いると低体温症になりそうだったので、下山を決断。ひとまず平笠不動まで戻ることに。
結局は戻ってきました。でも、晴れているうちに戻ってこれたのは良かった。さっきは全く見えていなかった火口がバッチリ見える。
岩手山の山頂は薬師岳、火口の中にはあるもう1つの峰は妙高岳と呼ばれている。
ちなみに、岩手山の山頂だが、食事ができそうな雰囲気ではない。食事をするなら、避難小屋周辺が無難だろう。
火口をグルっと一周するお鉢周りをして、反対側にある岩手山神社奥宮まで行きたかったが、時間はすでに14時。今回は急遽決めた山行のため、きちんとしたスケジュールを組んでおらず、14時ぐらいに出発すれば大丈夫だろうとアバウトに考えていたが、七滝登山口までの標準コースタイムを計算すると5時間20分。ということは、下山は19時20分?。下りなので多少時間を短縮できる自信はあるが、この時間はまずいと焦る。食事をする時間もなく、出発準備を整える。岩手山の山頂 ~ 不動平 ~ お花畑 ~ 大地獄分岐
七滝登山口向かうにはまず、御苗代湖・御釜湖の近くにある「お花畑」に向かう必要がある。お花畑に向かうには、平笠不動経由(1時間35分)と不動平経由(1時間50分)とがある。時間がないので、普通に考えれば、平笠不動経由だが、時間の計算をしっかりしておらずどっちも同じぐらいの時間だろうと思っていたことと、火口の縁をもう少し歩いてみたかったので、不動平に向かってしまう。結果的に問題はなかったが、今から考えたら、ちょっと危ない判断だった。
周辺にいた登山者の全員が、八合目避難小屋方面である柳沢コースに向かっていく。そして周りに登山者がほとんどいなくなり、さらに不安が助長。そして焦りから、鬼ヶ城方面に向かおうとしていたので、危なかった。(鬼ヶ城からでもお花畑に行けるが遠回りな上、鬼ヶ城を登らなければならない)
【14:59】お花畑に到着。
幸い、不動平からお花畑までの道は緩やかな下り道が中心だったので、体力的な難所はなかった。
その御苗代湖だが、とても静寂な雰囲気の湖。秘境って感じ満載です。休憩できるスペースはないが、ココで1時間ぐらいゆっくりできれば最高なのに..。
大地獄分岐へ向かう。お花畑から5分ほどで沢に出るが、岩手山では初の水場だったので衝動的に水を飲んでしまう。ちょうどトレランの人とすれ違い「この水飲んでるんですか?」と驚かれたが、 その時は疑問に感じず。そこから5分も進むと硫黄臭が漂い始めたため、そこで岩手山が火山だということを思い出す..。(汗)「大丈夫かな?」と思ったが、水を飲んだ箇所では硫黄臭はせず、味にも問題はなかったので、気にせず先に進む。
昼飯を抜いており、さすがに空腹にたえかねてきたので、ここで非常食のおにぎりを1つ食べながら小休憩。小休憩していると、松川温泉・網張温泉方面から登山者がやってくる。どこまで行くのか尋ねると、本日は小屋宿泊とのこと。小屋宿泊とはいえ、ココからだと2時間ほどかかるので到着は17時30分頃。この時期の山中の17時過ぎって相当薄暗いと思うが、やけに余裕の登山者。
大地獄分岐 ~ 七滝登山口
ココから登山口までの標準コースタイムは2時間50分。なんとかヘッドライトを使わずに登山口まで辿り着きたいので、引き続き先を急ぐ。
沢におりてしばらく進むと、「湯華採取跡」に到着。このあたりは硫黄水の影響か、岩肌が白や赤に変色している箇所が多々見受けられる。見方によってはちょっとおどろおどろしく感じる。
ちなみに「湯華採取跡」で、休憩中の中高年の登山者グループに遭遇。車できているとは思うが、早く下山しないと途中で真っ暗になるはずなのに、やけに余裕。でも自分は先を急ぐ。「湯華採取跡」近くにいくつか滝や川と交錯するポイントがあり、そこは見どころ。特徴的なのは、赤や白の岩肌だけでなく、流れがめっちゃ早いこと。理由はわからないが、水の流れが早いので、迫力がすごい。
見どころがある一方、登山道にぬかるみが多いので要注意。ちなみにこのぬかるみは、スパッツで防げるレベルではなく、最も深いところで膝下までぬかるみに埋まりました。 [ぬかるみにハマった足]一時はどうなるかと肝を冷やしたが、日が沈む前に登山口に到着できました。ココから、八幡平温泉郷内にある、本日の宿泊先に向かう。
【17:48】本日の宿泊先「温泉ゲストハウス やすもり」に到着。
本日の登山はこれにて終了。明日は八幡平です。お疲れさまでした。
八幡平温泉郷にある素泊まり専用の宿泊施設。岩手山の七滝登山口からも徒歩圏内で、八幡平に向かうバス停(八幡平ライジングサンホテル前)からも近い場所にあります。貸自転車のサービスがあるので、最寄りの飲食店やコンビニを利用する際に便利で、岩手山の焼走り登山口に自転車でアクセスも可能。八幡平と岩手山に登る場合は、拠点として利用すると便利です。
関連レポート
岩手山コースタイム
予定 | 実際 | 場所 |
---|---|---|
08:00 | 08:02 | 焼走り登山口 |
10:00 | 09:20~09:40 | 第2噴出口跡 |
11:30 | 10:32~10:46 | ツルハシわかれ |
12:30 | 11:32~11:38 | 平笠不動 |
13:10~13:40 | 12:15~12:37 | 岩手山の山頂 |
- | 13:05 | 平笠不動(厳密には手前) |
- | 13:38~14:00 | 岩手山の山頂 |
14:10 | 14:17 | 不動平 |
15:30 | 15:12 | お花畑 |
16:10 | 15:32~15:36 | 大地獄分岐 |
18:10 | 16:38 | 七滝 |
19:00 | 17:17 | 七滝登山口 |
岩手山の難易度
19/30
総合難易度必要体力 | |
コース距離 | |
所要時間 | |
危険度 | |
登山難易度 | |
小屋・水場 | |
アクセス | |
総合難易度 |
登山DATE
- 歩行距離:21.70km
- 高度上昇:1,664m
- 高度下降:1,724m
- 出発高度:0,570m
- 最高高度:2,038m
- 標高の差:1,468m
- 活動時間:07:47
- 休憩時間:01:28
- 合計時間:09:15
お気軽にどうぞ!
体力的難所は「岩手山山頂まで4.5km」の道標から第2噴出口跡まで、コマクサロードの急斜面をトラバースしている区間、山頂直下の急斜面の3区間。特に今回は、山頂直下の急斜面を2回登ったので余計に疲れた。ただ、登山口近くやツルハシわかれ近辺など、傾斜の緩やかな区間もあり、比較的緩急のあるコースといえる。
距離はかなり歩かされたが、傾斜の緩やかな区間も多いため距離が難易度に直結はしていない。特に七滝および焼走り登山口の近くは、道がほとんど平坦。ちなみに、距離は八幡平温泉郷の舗装道路を歩いた区間も含まれている。詳細なスケジュールを作成していなかったので、事後に作成したところスケジュールが破綻してました。ただ、標準コースタイムはかなり余裕をもって設定されているので、足に自信があるなら時間短縮を前提に登るのもあり。特に下山の七滝コースのコースタイムは、急いだとはいえ約30%も時間を短縮しているので、ちょっと余裕をもたせすぎているようにも思える。
今回は八幡平温泉郷に宿を予約していたので、七滝コースを利用したが、時間的な観点だけで言えば、柳沢コースから馬返し登山口に下山するのが現実的。ただ、八幡平とセットで登るなら、八幡平温泉郷に宿を予約して、七滝登山口に下山した方が効率的。焼走りコースの難点は水場がないこと。柳沢コースには水場があるので、水の観点からも柳沢コースは恵まれており、人気が高い要因の1つだろう。
反面、きれいで使える避難小屋が山頂周辺に3つもあり、宿泊登山にも対応していることや、トイレも完備されているので、トイレ・宿泊の観点では恵まれている。また、八合目避難小屋には夏期のみ管理人が常駐しているようだ。