[女峰山登山レポ]
二荒山神社からロングコースの黒岩尾根ルートで登る女峰山
- 女峰山(にょほうさん)日本二百名山栃木百名山日光三山
- 栃木県日光市にある標高2,483mの成層火山で、男体山や太郎山と並び日光三山のひとつに数えられている。山岳信仰でも知られ、標高差1,800mある二荒山神社からの道は修験道として古くから登られている。山頂の南側を30分ほど下った場所に、唐沢避難小屋がある。
女峰山のコース
女峰山の主な登山口は、南の日光二荒山神社(ふたらさんじんじゃ)と南東の志津乗越、東の霜降高原の3つ。
- 黒岩尾根ルート登り利用
- 日光東照宮のある二荒山神社から登るコース。古くから修験道として登られてきた道だが、標高差1,800mで標準コースタイム約6時間必要な難コース。コース上に唐沢避難小屋があり、宿泊可能。
- 霜降高原ルート下り利用人気コース!
- 東の霜降高原から赤薙山や一里ヶ曽根を経由して登るコース。霜降高原からは天空回廊と呼ばれる1,445段の階段を登らなければならない。
- 志津乗越コース
- 南東の志津乗越から唐沢避難小屋を経由して登るコース。車でアクセスできるのは志津乗越の東にある梵字飯場跡までのため、そこから1時間ほど歩かなければならない。志津乗越には志津避難小屋がある。
※その他、日光市街地から登るコースが2つほどあるが、利用者が少ないため割愛。
女峰山のコースが紹介されているのは、山と高原地図の「日光」です。地図を持たない登山は危険ですので、必ず地図を持って登りましょう!
女峰山の登山計画
- スケジュール
- 当初は日帰りで、霜降高原から登り日光市街地に下山することを考えたが、公共交通機関のアクセスでしかも日没の早い11月では不可能なことが判明。次に前日入りを検討したが、日光は観光地なので宿泊施設はたくさんあるが安宿がない。それなら素直に山中で宿泊した方がスケジュール的にも余裕が出るので、避難小屋に宿泊するスケジュールに決めた。
- コース
- コースは縦走即決だったが、問題は霜降高原から登るか、日光市街地の二荒山神社から登るか。唐沢避難小屋は二荒山神社から登るコース上にあるため、効率の観点から二荒山神社から登り霜降高原へ下山することに。ちなみに、日光市街地から霜降高原行きの始発バスに乗るには、自分の最寄駅の始発では間に合わなかったことも理由の1つ。
- アクセス
- まずは、電車の始発で東武日光駅へ向かう。東武日光駅からバスに乗り二荒山神社前で下車し、登山口のある行者堂まで歩く。
女峰山コースレポート
二荒山神社 ~ 稚子ヶ墓
【8:45】二荒山神社に到着。
もう1名同じバスで同じコースを登る登山者がいたのだが、二荒山神社で参拝している間に見失う。登山口のある行者堂への道がわからなかったため、現地の方に確認。
もう1名同じバスで同じコースを登る登山者がいたのだが、二荒山神社で参拝している間に見失う。登山口のある行者堂への道がわからなかったため、現地の方に確認。
二荒山神社までのバス
土日祝などで人が多いと、二荒山神社までの道が車両通行禁止になることがあるらしい。その場合、西参道バス停で下車して歩くことになる。
土日祝などで人が多いと、二荒山神社までの道が車両通行禁止になることがあるらしい。その場合、西参道バス停で下車して歩くことになる。
【9:03】行者堂に到着。
登山口は行者堂の左横。登山ポストに道標もあるのでわかると思うが、直進してしまわないように。
序盤で、沢地形を登る場所があり、少々道がわかりづらいので要注意。時間にして1分ほどだが、道を間違え引き返す。ただ、たぶん間違った道でも後に合流していたっぽい...。その後は林道に出る地点まで道は平坦。
林道から登山道に戻るとすぐに、急登が立ちはだかる。10分ほどで登りきったが、そこそこ傾斜のある急登。この急登を登り切ると「殺生禁断境石」と書かれた大きな石碑がある。以降はしばらくの間、傾斜が緩やかな登山道に戻る。
殺生禁断境石
「殺生禁断」とは生き物を殺すことを禁じることだが、この石碑の由来は不明。余談だが、この付近の登山道外にもう一つ同じ「殺生禁断境石」があるらしい。
「殺生禁断」とは生き物を殺すことを禁じることだが、この石碑の由来は不明。余談だが、この付近の登山道外にもう一つ同じ「殺生禁断境石」があるらしい。
頭上が開けてからは、少しずつ地味に傾斜が出始める。
【10:28】稚児ヶ墓(ちごがはか)に到着。
登山口から約1時間半経過しているので、ここで10分ほどの中休憩。
登山口から約1時間半経過しているので、ここで10分ほどの中休憩。
稚子ヶ墓 ~ 黒岩(逢拝石)
稚児ヶ墓までは、体感的に苦にならない程度の傾斜だったが、徐々に苦を感じる程度に傾斜が出始める。30分ほど登ると水場に到着。
【11:06】水場の分岐に到着。
水場は分岐から30秒ほど。ただし、水量は少ない。コップに水を入れて飲むことはできるが、水量が少ないので堆積物などが入りやすい。水は飲んだが、堆積物が入るので水筒への補給はしなかった。
水場は分岐から30秒ほど。ただし、水量は少ない。コップに水を入れて飲むことはできるが、水量が少ないので堆積物などが入りやすい。水は飲んだが、堆積物が入るので水筒への補給はしなかった。
水場から少し登ると樹林帯へ。道は再び白樺金剛あたりまで、緩やかな傾斜となる。
「水呑」の石碑から、白樺金剛までが20分ほどと意外と早かったので油断していたが、白樺金剛から黒岩までが本コースの正念場。体力疲労の蓄積により、荷物も重く感じるようになり、八風までがキツかった。
【12:57】八風(はっぷう)に到着。
八風からは、これまで歩いてきたコースが見え、また日光市街地を見下ろせる展望も広がっている。結構バテたのでココで10分ほどの中休憩。ちなみに「八風」は仏教用語。本コースは古道だけあって、地名からも意味深さが感じられる。
八風からは、これまで歩いてきたコースが見え、また日光市街地を見下ろせる展望も広がっている。結構バテたのでココで10分ほどの中休憩。ちなみに「八風」は仏教用語。本コースは古道だけあって、地名からも意味深さが感じられる。
八風から黒岩までの道はガレ場。しばらくすると道はトラバースするが、それまでは傾斜もあって体力的にキツイ。
【13:18】黒岩(逢拝石)に到着。
黒岩という地名だが、おそらく特定の黒い岩を指すのではなく、この周辺一帯に黒い岩が多いことから名付けられた地名だと思われる。 上の写真の正面に見えているピークが明日通る「一里ヶ曽根(独標)」。黒岩でも行動食を食べるため10分ほど中休憩。
黒岩という地名だが、おそらく特定の黒い岩を指すのではなく、この周辺一帯に黒い岩が多いことから名付けられた地名だと思われる。 上の写真の正面に見えているピークが明日通る「一里ヶ曽根(独標)」。黒岩でも行動食を食べるため10分ほど中休憩。
黒岩まで、誰一人として登山者を見かけなかったが、黒岩周辺で一気に6~7人ほどの登山者とすれ違う。早朝に車でアクセスして、日帰りで登っている登山者かと。時間は13時30分なので、日帰りの場合はこのぐらいの時間に黒岩を通過しておかないと、日没までに下山するのが難しくなるのだろう。
黒岩(逢拝石) ~ 唐沢避難小屋
黒岩から先は、スペシャル級の急登が立ちはだかる。黒岩での休憩で体力も少し回復したので、20分ほどで一気に登りきったが、しんどかった。
この区間の樹林帯は、樹木が鬱蒼としており気が滅入る。倒木などの影響で、局地的に道が分かりづらい場所もあり、少し注意が必要。
【15:00】唐沢避難小屋に到着。
苦しみながらも、なんとか暗くなる前に到着できた。日帰りではないので、もっと楽かと思っていたが、荷物の問題もあり想像以上にキツかった。
少し休憩したあとは、暗くならないうちに水場に向かう。水場までの道だが、距離はそれほどではないが、結構な急登を往復する。近づくと水の音が聞こえ、標識も設置されているので、見落として通過してしまう心配はない。
唐沢避難小屋に先着していたのは2名。日没後にテント宿泊者が1名やってきたので、この日は自分を含めて4名の宿泊者。19時ごろには他の方が寝始めたため、自分も就寝したが、それまでは宿泊者同士で適度に会話もあり楽しかったです。
小屋はきれいではないが、使えるレベル。唐沢避難小屋にトイレはないため、今回登山で初めて携帯トイレを利用した。ちなみに幽霊が出るという噂のある唐沢避難小屋だが、残念ながらこの日はお見かけしませんでした。[唐沢避難小屋内部]唐沢避難小屋 ~ 女峰山の山頂
【6:22】唐沢避難小屋を出発。
前日に、鶏すき焼き鍋にビールと荷物を消化していたので、昨日より荷物が軽い。山頂まで30分程度なので足取り軽く出発。
唐沢を抜け樹林帯に入れば、あとは10分ほど登ると山頂に到達する。
【7:02】女峰山の山頂に到着。
たぶん本日の一番乗り。早朝なので空気が澄んでいて、文句なしの展望に眺望です。南西から北西にかけては日光の山々が、南東には日光市街地、北東には日本三百名山の高原山が、さらに南の地平線には富士山まで見えている。
たぶん本日の一番乗り。早朝なので空気が澄んでいて、文句なしの展望に眺望です。南西から北西にかけては日光の山々が、南東には日光市街地、北東には日本三百名山の高原山が、さらに南の地平線には富士山まで見えている。
そして早朝に登頂したボーナスとして、霧氷を見ることができた。また、山頂には滝尾神社(二荒山神社の別宮)の奥社「女峰山神社」があり「田心姫命」が祀られている。
田心姫命(タキリビメ)
日本神話に登場する女神。宗像三女神(むなかたさんじょしん)の一柱。
日本神話に登場する女神。宗像三女神(むなかたさんじょしん)の一柱。
小屋で一緒だった2人も登ってきたが、自分より先に下山していったため、しばらく山頂は1人に。山頂で朝食を食べていると、7時30分頃に霜降高原から朝一で登ってきた登山者が。聞くと、日の出前から登り始めたそうで。でもこの方も、自分より先に下山していったので、長い時間山頂独占状態でした。
女峰山の山頂 ~ 一里ヶ曽根
【8:32】女峰山の山頂を出発。
下山は一里ヶ曽根(独標)と赤薙山を経由して、霜降高原に下山する。最初の1時間弱ほどは展望の開けた尾根上の道。
下山は一里ヶ曽根(独標)と赤薙山を経由して、霜降高原に下山する。最初の1時間弱ほどは展望の開けた尾根上の道。
一里ヶ曽根の手前で樹林帯へ入り、水場の分岐を通過する。分岐から高低差もなく30秒ほどの場所にある水場。山と高原地図には「細い」と書かれているが、この日は問題なく水が出ていた。
【9:36】一里ヶ曽根(独標)に到着。
山と高原地図には「独標」と書かれているが、山頂には一里ヶ曽根の山名標識。時間もあるので10分ほどの中休憩。ちなみに一里ヶ曽根の手前あたりから、登ってくる登山者を多く見かけるようになった。
山と高原地図には「独標」と書かれているが、山頂には一里ヶ曽根の山名標識。時間もあるので10分ほどの中休憩。ちなみに一里ヶ曽根の手前あたりから、登ってくる登山者を多く見かけるようになった。
一里ヶ曽根 ~ 赤薙山
一里ヶ曽根以降は、完全に樹林帯の道。一里ヶ曽根から赤薙山の区間は、シャクナゲが多く自生していたので、5月に登るとシャクナゲの花が咲き乱れているだろう。
【10:30】赤薙奥社跡に到着。
展望もきかず、特に何もない小スペース。ココで登りの方から話しかけられたので、少しの間会話休憩。
キスゲ平
赤薙山あたりから道標に「キスゲ平」という地名が現れるが「霜降高原=キスゲ平」です。
赤薙山あたりから道標に「キスゲ平」という地名が現れるが「霜降高原=キスゲ平」です。
【11:11】赤薙山に到着。
一面霧に覆われ展望はきかず。神社横の木に登山靴が吊るされていたが、誰がなんのために吊るしたのかは不明。なんか身投げしたみたいで怖いんですが..。
「焼石金剛」あたりは霧がなければ、展望は良さそうだが、この日は残念でした。下界は晴れてたんだけどね..。
【12:00】小丸山を通過。
この日は「日光国立公園マウンテンランニング大会」が行われていたため、天空回廊と呼ばれる1445段の階段を、多くのランナーが登ってきていた。下りだったの問題なかったが、霜降高原から登る場合は、スタート直後にこの天空回廊1445段の洗礼を受けることになる。
この日は「日光国立公園マウンテンランニング大会」が行われていたため、天空回廊と呼ばれる1445段の階段を、多くのランナーが登ってきていた。下りだったの問題なかったが、霜降高原から登る場合は、スタート直後にこの天空回廊1445段の洗礼を受けることになる。
【12:30】霜降高原バス停に到着。
霜降高原バス停は、天空回廊を下りきったすぐの場所、レストハウスの目の前です。13時10分発日光駅行きのバスに乗れました。
霜降高原バス停は、天空回廊を下りきったすぐの場所、レストハウスの目の前です。13時10分発日光駅行きのバスに乗れました。
女峰山のコースタイム
1日目
予定 | 実際 | 場所 |
---|---|---|
08:27 | 08:45 | 二荒山神社前 |
09:07~09:12 | 09:03~09:22 | 行者堂 |
10:42 | 10:28~10:42 | 稚児ヶ墓 |
13:02 | 13:18~13:30 | 黒岩(遥拝石) |
14:47 | 15:00 | 唐沢避難小屋 |
2日目
予定 | 実際 | 場所 |
---|---|---|
06:00 | 06:22 | 唐沢避難小屋 |
06:40~07:40 | 07:02~08:32 | 女峰山の山頂 |
08:50 | 09:16 | 水場 |
- | 09:36~09:45 | 一里ヶ曽根(独標) |
09:50 | 10:28~10:34 | 赤薙奥社跡 |
10:30 | 11:11~11:20 | 赤薙山 |
11:30 | 12:00 | 小丸山 |
12:00 | 12:30 | 霧降高原 |
女峰山の難易度
18/30
総合難易度必要体力 | |
コース距離 | |
所要時間 | |
危険度 | |
登山難易度 | |
小屋・水場 | |
アクセス | |
総合難易度 |
登山DATE
- 歩行距離:19.31km
- 高度上昇:1,988m
- 高度下降:1,257m
- 最低高度:619m
- 最高高度:2,483m
- 標高の差:1,864m
- 活動時間:09:44
- 休憩時間:02:39
- 合計時間:12:23
- 必要体力
- 本コースを登った登山者が口を揃えて言っていたのが「黒岩までキツイ」ということ。個人的には、白樺金剛から黒岩直後の急登を登りきった「苦しけりされど登りたし」の看板がある地点までの区間がツラかった。あと、2日目に登ったので問題なかったが、1日で登るなら唐沢は急登な上、ザレ場で登りにくいので、正念場となるだろう。
- 距離・所要時間
- 総距離19.3km、活動時間は約10時間というロングコース。日帰りするなら昼が長い夏至の時期に登らないと日没までに戻ってくるのは難しい。距離が長い分、序盤は緩やかな傾斜で歩きやすかったが、歩く距離が長いとその分体力も消耗するので、その影響で後半は体力切れでキツかった。
- 危険度
- 滑落するような危険箇所はないが、唐沢など崩落によりできたザレ場を登る箇所があるので、バランスを崩して下に転げ落ちないよう、注意が必要。序盤で道を間違った場面はあったが、総じて道はわかりやすい。
- 山小屋・水場
- ロングコースにも関わらず、有人山小屋のない事が難易度を上げている原因の一つ。せめてもの救いは唐沢避難小屋だが、あまりきれいな小屋ではなくトイレもないので、避難小屋に慣れている人でなければ宿泊するには勇気と決断が必要。水場に関しては、合計3箇所の水場があり、水に困ることはなかった。
- アクセス
- 日光駅からバスでアクセスできるため、交通アクセスには恵まれている。日光東照宮も霜降高原も観光地で、バスの本数も多いし。
- 総括
- 女峰山の難易度を上げている最大の要因は、やはりコース距離の長さ。にも関わらず有人山小屋はないため、難易度的に中級者向け。登山者は圧倒的に霜降高原ルートが多く、黒岩尾根ルートで見かけた登山者は数人。人がいなくて寂しい反面、静かな山歩きを楽しむことができた。
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二荒山神社 ~ 唐沢避難小屋 ~ 女峰山 ~ 赤薙山 ~ 霜降高原