櫛形山

櫛形山登山

櫛形山

Kushigatayama

白

[櫛形山登山レポ]
南尾根登山道から登る、原生林が残る櫛形山登山

2019年5月18日(土) 天候:曇り時々晴れ
平林バス停 ~ 氷室神社 ~ 櫛形山 ~ 裸山 ~ 氷室神社 ~ 平林バス停
  • 櫛形山(くしがたやま)日本二百名山新花の百名山山梨百名山
  • 山梨県の西部、南アルプス市と富士川町の境にそびえる、南アルプスの前衛峰にあたる標高2,052mの山。山頂付近には、北から唐松岳(1,856m)、裸山(2,002m)、奥仙重(2,051m)などの峰が連なっており、比較的平坦な地形となっている。また、山頂付近には原生林が広がっており「やまなしの森林100選」に選ばれている。さらに、裸山の北東にはアヤメ平と呼ばれるアヤメの大群落があり、開花時期の6月中旬頃には多くの登山者が訪れる。ちなみに山名の由来は、和製の櫛を伏せたような形をしているため。

櫛形山のコース

櫛形山案内図荒船山登山道案内図。
櫛形山の主な登山口は、西:池の茶屋登山口、東:氷室神社、県民の森、北東:みはらし台 の4つ。
  • 池の茶屋登山道人気コース!
  • 2002年に出来た一番新しいルート。櫛形山西側の山頂近くまで開通している、池の茶屋林道の終点。標高1,860mから登る最短コース。
  • 南尾根登山道登り利用下り利用
  • 東の氷室神社から、ほこら小屋を経由して登るコース。氷室神社近くの平林までバスが出ており、唯一公共交通機関でアクセスできる登山口。
  • 中尾根登山道
  • 東の県民の森から、ほこら小屋を経由して登るコース。登山口近くに伊奈ヶ湖がある。ほこら小屋で南尾根登山道と合流する。
  • 北尾根登山道
  • 北東のみはらし台から、アヤメ平を経由して登るコース。池の茶屋登山道に次ぐ人気コースで、特にアヤメが咲く時期は利用者も多くなる。
  • 丸山登山道
  • 北東の丸山登山道から唐松岳やアヤメ平を経由して登るコース。アヤメ平で北尾根登山道と合流する。コース距離が長く、利用者は極端に少ない。
山と高原地図
櫛形山のコースが紹介されているのは、山と高原地図の「北岳・甲斐駒」です。地図を持たない登山は危険ですので、必ず地図を持って登りましょう!

櫛形山の登山計画

コース
櫛形山に公共交通機関でアクセスできる登山口は、南尾根登山道から登る氷室神社のみのため、コースはすぐに決定。なお、スケジュールを組むと南尾根登山道のピストンだと時間が余るため、下山は中尾根登山道を下り、登山口の県民の森から平林バス停まで林道を歩く周回コースも、可能性の1つとして考えていた。しかし、後に判明するが山と高原地図(2014年度版)の、標準コースタイムに誤りがあり、スケジュールが大きく狂うことになる。
アクセス
最寄りのバス停は平林バス停。バスは1日3本で、鰍沢口駅発7:00 - 平林7:35着のバスに乗り、帰りは、平林発15:00 - 鰍沢口駅着15:35のバスに乗らなければならない。東京都内から朝一の電車に乗っても、鰍沢口駅7:00発のバスには間に合わない。そのため、前日の最終電車で甲府まで移動し、漫画喫茶「快活CLUB 甲府上阿原店」で仮眠。早朝に南甲府駅まで歩き、鰍沢口駅にアクセスする。
その他
前日に会社の送別会があり、飲み会に参加してから甲府に移動したため、若干2日酔いで登山に挑むことになってしまった。

櫛形山コースレポート

平林バス停 ~ 氷室神社(南尾根登山口)

【7:35】平林バス停に到着。
バス停近くにある、平林交流の里「みさき耕舎」に誰でも利用できるトイレがある。諸々、身支度を整え出発。

【7:44】平林バス停を出発。
平林バス停から林道を歩き、登山口のある氷室神社へ向かう。なお、氷室神社までの道中だが、道標はほとんど設置されておらず少々わかりにくい箇所もあったため、GPSを見ながら歩いた。
氷室神社の手前に分岐があり、左が「櫛形山トレッキングコース」、右が「櫛形山登山道」となっている。少し紛らわしいが「櫛形山トレッキングコース = 池の茶屋登山道」で「櫛形山登山道 = 南尾根登山道」である。分岐に「←櫛形山」と書かれた道標があるので、惑わされないように。南尾根登山道から登るなら、右が正解。
氷室神社519段の階段は結構キツイ。この階段で結構体力持ってかれます。ちなみに、階段ではなく九十九折の道を歩くこともできるが、楽な反面時間はかかるはず。
【8:27】氷室神社の本殿に到着。
登山口は本殿の左側にあり。すぐにわかると思う。
ポイント コースタイムについて
山と高原地図(2014年度版)には、平林バス停~ほこら小屋の区間が、2時間で設定されているが、これは間違い。2019年最新版では、平林バス停~林道までが1時間30分、林道~ほこら小屋が1時間の、合計2時間30分に変更されている。しかしそれでも、平林バス停~林道の1時間30分はかなり厳しいコースタイム。ちなみに現地の道標では、南尾根登山口(平林バス停ではなく)~林道のコースタイムで1時間40分に設定されている。

氷室神社(南尾根登山口) ~ ほこら小屋

【8:35】南尾根登山口を出発。
登山口からほこら小屋まで、急勾配とまではいかないが、緩やかとも言えない傾斜の道が続く。急登がない反面、平坦もなく、延々とこの傾斜の道が続き、ある意味キツイ。
前日飲んだ酒が残っているようで、数歩進むだけで息切れと滝のような汗、そしてやたらと乾く喉など、体調がヤバイ..。2日酔ではないが、前日の飲酒が影響しているようで..。ちょっと舐めすぎた。

沢下で水の流れる音がしていたので、少し登れば水が飲めるかもと予想していたが、予想通り登山道は水の流れる沢を横切っていた。山と高原地図に、水マークは記されていないが、乾いた喉を山の冷たい水で潤せるので、これぞまさに回復の泉。ココで減った分の水を補給して、その場でも水をがぶ飲み。顔も洗って、気分を一新させる。

水場でリフレッシュしたことで、体調が少し回復。と思ったが、それも少しの間だけ。その後もダラダラと続く傾斜に、徐々に体力を奪われ、最初と変わらずバテバテ状態に逆戻り。純粋にコースがキツイのか、体調不良の影響なのか..。ゆっくり登ればなんとかなるが、帰りのバスの時間までに下山しなければならないので「撤退」という可能性も頭をよぎる。
直登ではなく、道は九十九折になっており、左に右にと大きく振られる場面が多い。舐めきってストックを持ってこなかったのも、大失敗..。とにかく林道までが遠く・長く感じられ、内容もバテバテで惨憺たる状況だった。

【9:46】林道に到着。
途中で林道を横切る地点があり、ココがほこら小屋との中間地点。道標によると登山口の4時間(240分)から140分に減っているので、この区間の標準コースタイムは1時間40分(100分)で設定されている。バテバテ状態にもかかわらず1時間10分で到着しているので、少し余裕を持たせた時間設定かと。

林道を過ぎたあとも、代わり映えしない道が続く。九十九折が多くて、とにかくしんどい..。シャリバテも加わり、もはや疲労困憊。

【10:27】ほこら小屋に到着。
ほこら小屋以降、道の傾斜が緩やかになることは地図の等高線からわかっていたため、難所は越えたかと。疲れたので、休憩しながらおにぎりを食べて、体力を回復させる。ほこら小屋で、ようやく本日初となる登山者と遭遇。

ほこら小屋には水場があるはずだが、目に見える範囲には見当たらず。水はたっぷりあるので、あえて探さなかったが、後に調べたところ小屋の裏にあるようだ。また、ほこら小屋にはトイレもある。小屋内部はきれいで、管理が行き届いている印象だった。[ほこら小屋内部

ほこら小屋 ~ 櫛形山の山頂

道標によると、ほこら小屋から山頂まで80分。ココの区間は山と高原地図の標準コースタイムとも整合性がとれている。ほこら小屋直後に少し登る箇所もあるが、そこを過ぎれば緩やかな起伏の平坦地となる。山名の由来になっている和製の櫛に例えると、櫛の上(背中)に到達したことになる。

ほこら小屋以降は植生が一変し、カラマツ、モミ、コメツガ、シラビソ、ダケカンバなどの、原生林が広がる。
山頂付近はそれぞれのコースとの合流地点になっているため、分岐が多い。ただし、分岐に道標はしっかり設置されているので道迷いの心配はない。

山頂スペースは広く、シニアの団体が時間差でやってきたが、それでも手狭感はない。むしろ広々としている。

本来なら、正式な山頂の奥仙重(おくせんじゅう)まで行く予定だったが、時間の余裕もなく、体力的・精神的余裕もないのでパス。行ったところで、三角点以外に何もないことは事前リサーチで調査済みだし。
ポイント 櫛形山の山頂
櫛形山の山頂(奥仙重)は厳密には、山頂標識から10分ほど進んだ場所にある。ただし、山頂標識のある場所と標高差はほとんど変わらず、山頂の奥仙重には三角点以外何もない。

櫛形山の山頂 ~ 裸山

【11:25】櫛形山の山頂を出発。
昼食は裸山を予定していたため、長居は禁物。まずは「バラボタン平」の分岐まで戻り、そこから裸山を目指す。
巨木は櫛形山より裸山の方が多く、まさに原生林といった光景が広がっている。
裸山でコースは円を描いて周回しているので、裸山手前の分岐はどちらに進んでも良い。
展望・眺望は櫛形山より裸山の方が良い。北西に南アルプス北部の山々、南東には富士山の眺望が望める。しかしこの日は雲が多く、富士山は見えず、南アルプスの山頂付近は雲をかぶっていた。唯一、甲斐駒ヶ岳だけは山頂まで見えていた。なお、裸山の山頂から少しずれた地点から、赤石岳・悪沢岳も見えるようだが、こちらも雲で見えていなかったと思う。
そばめしを作って食べて、45分ほど滞在。12時20分を過ぎると山頂には誰もいなくなってしまった。昼飯時なのに、これだけ人数が少ないとは思わなかった。写真を撮ってもらいたかったが、誰も来る気配がないため、頃合いを見て出発。

裸山 ~ ほこら山

【12:35】裸山を出発。
道標によると登山口のある氷室神社まで2時間なので、平林バス停まで歩く時間を含めても、十分間に合う計算。まずは、ほこら小屋を目指す。
カラマツやモミの木、そして木々に垂れ下がるサルオガセ、ちょっと他の山では見られない、貴重な原生林が広がっている。
ポイント サルオガセ
木の枝にぶら下がっている、とろろ昆布のような植物。標高が高く、空気のきれいな場所でなければ生育できない。植物と書いたが厳密には「地衣類」。(菌類で、藻類を共生させることで自活できるようになったもの)
【13:04】ほこら小屋に到着。
ほこら小屋周辺はバイケイソウの群生地になっている。

ほこら山 ~ 氷室神社 ~ 平林バス停

あとは登ってきた道を、ひたすら下って氷室神社を目指す。ほこら小屋以降は、どんより曇っていた空も、日差しが戻り始める。登りでは苦しめられた道だが、対象的に下りは歩きやすい。
【13:25】林道を通過。
登りでは見かけなかった路肩に車が1台。車の中に犬のゲージが見えたので、ほこら小屋で犬と一緒にいた登山者の車だろう。確かに車なら、わざわざ氷室神社の登山口から登らずとも、この林道から登ることができる。
【14:08】氷室神社の南尾根登山口に到着。
あまりにも下りやすい道だったので、予想以上に早く氷室神社に到着。バスの時間まで余裕があるため、氷室神社でお参りなどして時間調整。ちなみに、神社で休憩していると、大きな音とともに上から巨大な杉の枝が落ちてきて、ちょっと焦った。
【14:44】平林バス停に到着。
あとで知ったが、バス停近くにある「みさき耕舎」という食事のできる施設がある。バスだとちょっと時間的に厳しいかもしれないが、余裕があればこの施設に寄って食事をするのもあり。
ポイント みさき耕舎
平林地区の活性化のために作られた、農業体験などを行っている施設。古い養蚕農家をイメージした建物で、食堂では、そば、うどん、おにぎりなどが食べられる。

櫛形山のコースタイム

予定 実際 場所
07:35~07:40 07:35~07:44 平林バス停
- 08:27~08:35 南尾根登山口
- 09:46 林道
09:35 10:27 ほこら小屋
10:15 11:03 バラボタン平
10:45~11:00 11:11~11:25 櫛形山の山頂
11:50~12:50 11:48~12:34 裸山
13:30 13:04 ほこら小屋
- 14:08~14:22 南尾根登山口
14:30 14:44 平林バス停

櫛形山の難易度

難易度5

13/30

総合難易度
必要体力 体力難易度4
コース距離 コース距離難易度4
所要時間 所要時間難易度3
危険度 危険度難易度0

登山難易度 登山難易度6
小屋・水場 小屋・水場難易度0
アクセス アクセス難易度2

総合難易度 総合難易度4

登山DATE

  • 歩行距離:16.39km
  • 高度上昇:1,371m
  • 高度下降:1,373m
  • 出発高度:0,771m
  • 最高高度:2,052m

  • 標高の差:1,281m
  • 活動時間:05:38
  • 休憩時間:01:22

  • 合計時間:07:00
必要体力
登っているときは、純粋にコースの難易度が高いのか、前日の飲酒による体調不良が原因なのかよくわからなかったが、データから分析すると、体力的難易度の高いコースだったことがわかる。標高差は1,281mで、氷室神社の登山口からほこら小屋までの区間で、標高1,000mを約2時間で登っていた。どおりでキツイ訳。あと、こういうダラダラと続く傾斜の道は、あまり得意ではないので、相性の悪さもあったと思う。こういうタイプの道は、ストックがあった方が登りやすい。
距離・所要時間

2019年度版の山と高原地図で、平林バス停~林道までの区間は1時間30分に設定されているが、これでもかなり厳しいコースタイム。(※)この区間は少なくとも、2時間はかかる計算をしておいた方が良い。距離は林道歩きを除いても約15kmと結構歩いている。ただし、これは山頂付近の平坦地をウロチョロしたため。

※自分が持参した「山と高原地図(2014年度版)」は平林バス停~ほこら小屋で2時間設定なので、さらに厳しかった。
危険度・山小屋・水場
道迷い、滑落ともに危険箇所はまったくない。山頂付近の平坦地も、踏み跡明瞭な上、道標も多く設置されているので、道迷いの心配はない。
日帰り前提の山にもかかわらず、山頂付近にトイレのある避難小屋があり水場もあるなど、山小屋・水場の観点では恵まれている。
アクセス
かつて中尾根登山口の先にある、上市之瀬からもバスが出ていたが、現在はバス路線が廃止されているため、公共交通機関でアクセス可能なバス停は、平林バス停のみ。ちなみに、自分と同じくバスでアクセスして同じコースを歩いた、他登山者の記事に「バスの運転手さんから、このバスで櫛形山を往復をした人は初めてだと言われた」と書かれていたので、大半の人は車でアクセスしているのだろう。
総括
それほど知名度の高い山ではないと思うが、想像以上に良かった。山頂付近の原生林に、晴れていれば富士山や南アルプスの展望もあるなど見どころが多い。また、6月ならアヤメも咲くので、6月の晴れた日に登れば最高だと思う。にもかかわらず、見かけた登山者は10数組程度だったので、穴場の山と言えるだろう。今回、雲が多く眺望はいまいちだったので、次回は晴れた日に、グループを組んで車で他コースから登ってみたい。
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