[天祖山登山レポ]
道迷い遭難注意!表参道から急登を登る天学教の霊山天祖山
東日原 ~ 天祖山 ~ ウトウノ頭 ~ 金袋山 ~ 東日原
- 天祖山(てんそざん)
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奥多摩山域の長沢背稜の支尾根にある標高1,723mの山。江戸時代は白石山と呼ばれていた山で、明治以降「天学教」の霊山となり、山名が天祖山に変更された。山頂に天祖神社が祭られ、その表参道には大日神社が鎮座(現在は荒廃)しており、今でも8月上旬の礼祭日には信者による登拝が行われている。奥多摩屈指の急登に加え、途中樹林帯でほとんど展望はきかないため、極端に登山者が少ない不人気な山。
天学教は明治初年に新しく興った、農民救済に重きをおいた宗教。教祖の服部国光は1847年2月神奈川県の荏田生まれ。十代半ばで修行に入り、奥多摩の白石山(今の天祖山)で荒行を行い、二十代の若さで天学教を開いた。 最盛期の明治後期から大正時代にかけては信者十数万を擁した天学教だが、昭和になり戦後の神道離れ、周辺の都市開発により、信者のほとんどが農業を放棄してしまい、農民救済に重きをおいていた天学教は、次第に衰えていった。
- ウトウノ頭(うとうのかしら)
- 奥多摩山域の長沢背稜から日原方面へ伸びるタワ尾根上にある、標高1,588mの山。ウトウとは鳥の名前で、漢字では善知鳥と書く。
- 一石山(いちいしやま)
- タワ尾根上にある、標高1,007mの山。麓に一石山神社が鎮座している。
天祖山のコース
天祖山のコースは、八丁橋から登る表参道とタワ尾根から登る裏参道の2つのみ。登山口は表参道は八丁橋、裏参道は一石山神社。この2つの登山口を起終点にした周回ルートも可能だが、タワ尾根は山と高原地図では破線で描かれる難コースであり、また日帰りするには朝早い時間帯に日原を出発しなければならず、少々ハードルが高い。そのため、表参道のピストンも想定される。
ちなみに、利用者で最も多いパターンは長沢背稜にある酉谷山の避難小屋で一泊した登山者が、表参道沿いに下山で利用するケース。または、雲取山・雲取山荘からの下山利用も想定される。
日原林道を八丁橋を越えて雲取山方面に進んだ林道脇からバリエーションルートで登ることも可能なようだ。地図上では、大ブナ尾根、赤石尾根と書かれた2つの尾根から登れるように見える。- 表参道登り利用
- 八丁橋近くにある登山口から、天祖山を南から北に向かって目指すコース。
途中に大日神社が鎮座し、山頂近くには信者が登拝時に利用していると思われる会所もある。
- タワ尾根(裏参道)下り利用難コース
- 一石山神社から一石山、金袋山、篶坂ノ丸、ウトウノ頭とタワ尾根上を登り、長沢背稜に出てからはUの字の動きをとり、天祖山を北から南に向かって登頂する。
山と高原地図では破線表示される難コースで、遭難しやすく滑落死亡事故も起きている。
天祖山よりも、酉谷山を目指す登山者の方が多いかもしれない。天祖山を想定すると、下山利用者の方が多いだろう。
天祖山の登山計画
- プラン
- 今回の登山は、本格的登山シーズンに向けた筋トレ&基礎体力作り。また、去年から行っている奥多摩急登チャレンジ登山の1つで、天祖山の八丁橋から登る表参道は、奥多摩三大急登に勝るとも劣らない急登という情報を聞いたので、その検証を兼ねた登山でもある。
- アクセス
- 今回は時間がタイトになる可能性を考慮して、奥多摩駅発-東日原行き6時27分のバスに乗ることを計画。しかし、地元の最寄駅からだと始発に乗っても間に合わないため、タクシーで吉祥寺まで移動して、吉祥寺からの始発電車で奥多摩駅に向かうことにした。
- その他
- 今回も筋トレが目的のため、ストックは持参しなかった。人も少なく遭難が多い山ということだったので、山と高原地図以外に、国土地理院2万5千分の1地形図も持参。
天祖山コースレポート
東日原 ~ 天祖山登山口
【7:05】東日原に到着。
東日原から林道を歩き八丁橋の天祖山登山口を目指す。
さて、登山口までの林道歩きだが、日原鍾乳洞との分岐である日原林道分岐まではほぼ平坦。その後は緩やかに標高を上げていくが、東日原から八丁橋までの標高差は約60mなので、体感的にはほとんど傾斜を感じない。
東日原から登山口までの間に水場はないので、水は東日原で調達しておく必要がある。 登山口から見た登山道は、初っ端から相当な急登。急登に備え登山口で準備を整える。
天祖山登山口 ~ 尾根筋
出発直後から、踵を地面につけられないほど傾斜のある登山道を登っていく。5分ほど登ると、石の積まれた九十九折の登山道が出現。この沢地形をジグザグに伸びる石垣のような登山道は、天祖山の象徴的なシーン。信者さんがせっせと作ったのでしょうか?これだけの石を積んだり並べたりするのは結構大変だったと思う。でも、見た目は芸術的だけど、実際登るとかなりしんどい道。
登り始めて30分弱ほどだが、疲れたのでココで中休憩。ココまでが第一ステージ。
尾根筋 ~ 大日神社
やけにトラバース道が続くのでおかしいとは思いつつも、しっかりした道だったため、そのまま15分ほど進んでしまう。東京都水道局の施設が見えた時点で、おかしいと思い地図とGPSで道間違いに気付く。この先に見えているのは孫惣谷(まぐそだに)と呼ばれる場所。思い返すと、倒木の場所で道を間違ったことは想像できたので、倒木の場所まで戻ることに。
予想通り、倒木の場所で道を間違っていたが、改めて確認すると正規登山道を倒木が完全に遮っている。正しい登山道は倒木の下をくぐって進まなければならない。それに比べて水源管理事務所への道は倒木がなく開けているので、一見するとこちらが正規登山道のように見える。結局この道迷いで、30分ほど時間をロストした。既にこの倒木は撤去されています。
ところで、このあたりには水場があるはず。尾根に出てからは水場を注意深く探していたが見つけられず。山と高原地図には「水量乏しく枯れることあり」と書かれているが、事前の調査ではパイプから水が出ている写真を見ていたので、枯れているにしても水場のパイプはあるはず。山頂で出会った登山者も水場は見かけなかったと言っていた。
後に他登山者のレポートと自分の写真を照らし合わせ、水場らしき場所を特定。先程道を間違った水源林巡視道の分岐を過ぎてすぐの場所で、おそらく水場のパイプごと落ち葉に埋もれていたと思われる。もともと枯れる可能性のある水場なので、この水場はアテにして登らないほうが良さそうだ。ココで中休憩。なお、この少し先に荒廃した大日神社があるので、そこまで行ってから休憩しても良いかと。
大日神社 ~ 天祖山の山頂
GPSの標高・時間と写真の時間を照らし合わせると、おそらくココが標高1,459mのピーク。本日下山2組目のソロ登山者とすれ違う。ここまでが第三ステージ。
後半も引き続き地味な上り道が続く。標高も1,500mを越えると、枯れ木の隙間から周辺の山々が見えるようになり、ちょっとした景色の変化を糧にひたすら登る。鍵はかかっておらず引き戸を開けると誰でも入れる。外から見るとボロそうな建物だが、中は意外とキレイ。今でも8月上旬の礼祭日には信者による登拝が行われているそうなので、そのときに使われているのかも。ちなみにボットンですが、トイレもあります。
【11:38】天祖山頂の天祖神社に到着。山頂に到達したので第四ステージ終了。
予想通りだが、誰もいない。天祖神社には外から閂(かんぬき)がかけられているが、外せば中に入ることも可能。もちろん、入っていませんが。
天祖山の山頂 ~ 水松山
【12:30】天祖山の山頂を出発。
後からやってきた登山者は自分より早く出発していったので、その登山者の後を追うような形で進む。
タワ尾根から下山するにはまず、長沢背稜に出なければならない。目指す中間目的地は、長沢背稜にある水松山(あららぎやま)。なお、天祖山から水松山まで、1度下ってから登り返す必要がある。その鞍部にあるのが、梯子坂ノクビレ。事前リサーチの情報で、この登り返しはそれほどツラくないとのこと。
山と高原地図にはナギ谷ノ頭という小ピークを過ぎたあたりで「迷」マークが付いている。注意して歩けば問題ないが、尾根が広がり道がわかりにくい場所もあるので、ちょいと注意して歩いた。【12:50】梯子坂ノクビレに到着。
梯子坂ノクビレには、御供所(ごくうしょ)周辺通行禁止のお知らせが設置され、御供所方面の道標も切り取られている。案内板には「当分の間は通行禁止」とあるが、後に調べると登山道の崩落は1991年なので、26年前の出来事。先ほど道を間違え進んでしまった孫惣谷(まぐそだに)経由で八丁橋まで戻れるルートのようだ。このコースが通れれば、タワ尾根まで大回りしなくてすむんだけどね。
水松山 ~ ウトウノ頭
長沢背稜上にあるタワ尾根ノ頭(滝谷ノ峰)を起点に、方角を変えタワ尾根に入る。厳密に言えば、コースはタワ尾根ノ頭山頂を巻いている。道標ぐらいはあるだろうと思っていたが、まさかの案内板・道標なし。タワ尾根ノ頭付近でコースはV字型にうねる特徴的な形をしているので、気付きやすいとはいえ、道標もないとは..。
タワ尾根の入口には「行くな!」という意味なのか、トラロープが張られている。ウトウノ頭付近で2016年4月に62歳ソロ女性の滑落死亡事故が起きているので、安易に登山者が入り込まないようにしているのかもしれない。歩いたのでわかるが、確かにタワ尾根は事前準備なしに入るとかなり危ない。入口こそ少しわかりにくいが、少し進むと尾根が細くなり踏み跡も確認できるようになる。そして唐突に現れる物資運搬用のレール。比較的新しいレールなので、最近設置されたのかも。最初は「このまま登山口までこのレール沿いを歩くのか?」と思ったが、さすがにそれは甘かった。このレールは大京谷ノ峰までコースと並行しているが、その後はコースから外れる。ちなみに、山と高原地図では、このレールの区間に「迷」マークが付いていたが、レールがあるので迷う要素なし。地図が古いか更新されていないか。
【14:23】大京谷ノ峰に到着。山と高原地図には、大京谷ノ峰という名称は出てこない。国土地理院の地図では1,602mと記されているピーク。ココから大京谷ノクビレまで急降下する。なお、自分は直進したが、他登山者のレポートによると迂回路があったぽい。
一見すると「ココ登るの?」と思うほど、荒れた感じがあってコースっぽくない。ピンクリボンの目印があるため、コース上であることはわかるが、目印がなければココでかなりの人が迷うだろう。
岩の上、尾根に出たあとも、一部岩むき出しの細い尾根を進む。【14:48】ウトウノ頭に到着。
ウトウの絵が印象的な山頂だが、展望はきかず山頂スペースも狭い。時間に余裕はないので、休憩なしで先を急ぐ。
金袋山の山名標識は木からはみ出していたので、下山でも気付くことができた。ピーク感は殆どない。
当初勘違いで、人形山で道が別れていると思っていたので、人形山のピークを探すも見付からず。正しくはミズナラの巨木で道が別れている。ミズナラの巨木は近くに案内板が設置されているので、見付けやすい。ミズナラの巨木の側に立っても落ち葉で道は消失しているため、方角を頼りに進むと目印発見。
一石山は気付かず通過してしまったが、後に確認したら写真が見付かった。一石山以降は一気に急降下して、標高を下げていく。
後半道迷いを警戒して歩いていたので、ホッと一安心。タワ尾根入ってからは精神的に疲れた。
なんとか、17時22分発の奥多摩駅行きバスに間に合いました。出発1時間早く出てほんと良かった。1本遅いバスだと18時過ぎていたし。
天祖山コースタイム
予定 | 実際 | 場所 |
---|---|---|
06:57 | 07:05 | 東日原バス停 |
08:07 | 07:51~08:07 | 天祖山登山口 |
- | 09:57 | 大日神社 |
- | 11:29 | 会所 |
10:52~11:52 | 11:38~12:30 | 天祖山の山頂 |
13:07 | 13:31 | 水松山 |
- | 13:59 | タワ尾根の頭 |
- | 14:48 | ウトウノ頭 |
- | 15:39 | 金袋山 |
- | 16:03 | ミズナラの巨木 |
- | 16:15 | 一石山 |
16:37 | 16:48 | 一石山神社登山口 |
17:07 | 17:13 | 東日原バス停 |
天祖山の難易度
22/30
総合難易度必要体力 | |
コース距離 | |
所要時間 | |
危険度 | |
登山難易度 | |
小屋・水場 | |
アクセス | |
総合難易度 |
登山DATE
- 歩行距離:23.97km
- 登山歩数:36,414歩
- 高度上昇:1,974m
- 高度下降:1,982m
- 出発高度:0,614m
- 最高高度:1,723m
- 標高の差:1,109m
- 活動時間:09:00
- 休憩時間:01:08
- 合計時間:10:08
お気軽にどうぞ!
他奥多摩の急登もそうだったが、登り始めが最も急傾斜。特に序盤で、九十九折というより左右に大きく振られる箇所が多く、標高差以上に歩かされた気がする。それと、殆ど人も歩かない道なので、道が踏み固められておらず、登りにくい。さらに、落ち葉で足元はゆるく道もわかりづらくと、悪状況に拍車をかけている。
大日神社以降は、道も広がり尾根を直登に上へ上へと進む。大日神社までくると傾斜も緩やかになり、左右に振られることもなくなるが、地味にキツイ登りに加え、変わらない景色が延々と続くので、これはこれでツライ。 後半は体力切れで倒れ込む場面もあり、体力的には相当厳しい。
天祖山の表参道だけで言えば、道迷いの心配はそれほどない。と言いつつも、自分は思いっきり道を間違ってしまったが..。
天祖山にたどり着けば、そこから長沢背稜の水松山までのアップダウンはそれほど激しくはない。ただし、天祖山までで体力を奪われ、天祖山の山頂を踏んだことで、気持ちも途切れているので、そういった意味でキツく感じるかもしれない。まず、大京谷ノ峰までは、コース上を貨物用レールが並行しており難所はない。大京谷ノ峰からウトウノ頭までは、道迷い、滑落などに注意が必要。ウトウノ頭以降滑落の心配はなくなるが、反面道迷いの危険性が高まる。要所で立ち止まって地図で確認するなど、小さな道迷いは頻発する。特に要注意なのはミズナラの巨木周辺。落ち葉のせいもあって、広い尾根にも関わらず完全に道が消失していた。
天祖山表参道を含め、コース上に水場は一切ないので、水の量には十分配慮が必要。自分は2.8L持参して、ミズナラの巨木あたりで水がなくなった。結局、途中で出会った登山者は、天祖山の表参道下山利用で2組3名、同じコースを歩いた1名の合計3組4名のみ。晴れた4月の日曜日でこれだけ人が少ないとなると、信者を除けば年間100人も登っていないと思われる。まさに不人気の山。
そして、不人気要因の1つでもあるが、天祖山の表参道・タワ尾根ともに、あっぱれなほど展望はきかないので、展望を期待してはいけない。巨木が多いので、そっち方面を楽しんで登ったほうが良い。