伊豆ヶ岳

伊豆ヶ岳登山

伊豆ヶ岳

Izugatake

白

[伊豆ヶ岳登山レポ]
男坂の鎖場を登る伊豆ヶ岳登山

2019年2月24日(日)天候:晴れ
正丸駅 ~ 伊豆ヶ岳 ~ 古御岳 ~ 高畑山 ~ 天目指峠 ~ 子の権現 ~ 吾野駅
  • 伊豆ヶ岳(いずがたけ)
  • 埼玉県飯能市にある、奥武蔵を代表する標高851mの山。山頂直下の男坂には長い鎖場があり、かつては伊豆ヶ岳のシンボルとなっていたが、落石の危険により実質的に通行禁止となっている。

伊豆ヶ岳のコース

伊豆ヶ岳に登るのは正丸峠、山伏峠、正丸駅の3つのルートが一般的。正丸峠と山伏峠には公共交通機関は出ていないため、車でのアクセスとなる。
なお、登りではほとんど利用されないが、下りでは天目指峠(あまめざすとうげ)、子の権現 天龍寺(ねのごんげんてんりゅうじ)を経由して、西吾野駅や吾野駅に抜ける縦走コースは、埼玉県の「関東ふれあいの道 伊豆ヶ岳を越えるみち」に指定されており、利用する登山者も少なくない。今回下山はこのコースを歩いた。
  • 正丸峠から伊豆ヶ岳人気コース!
  • 北の正丸峠から南に歩き、長岩峠を経て伊豆ヶ岳に至るコース。山頂まで約1時間。
  • 山伏峠から伊豆ヶ岳
  • 北西の山伏峠から伊豆ヶ岳に登るコース。山伏峠は一般車通行禁止のため、近くの「名栗げんきプラザ」に車を駐車する。山頂まで約1時間。
  • 正丸駅から伊豆ヶ岳登り利用
  • 北東の正丸駅から伊豆ヶ岳に至るコース。山頂まで約2時間。
※その他、上久通(かみくずう)林道などから登るコースもあるが、利用者は少ないため割愛。
山と高原地図
伊豆ヶ岳のコースが紹介されているのは、山と高原地図の「奥武蔵・秩父」です。地図を持たない登山は危険ですので、必ず地図を持って登りましょう!

伊豆ヶ岳の登山計画

目的

下山で「子の権現 天龍寺(ねのごんげんてんりゅうじ)」を通るので、当初は初詣も兼ねて年始に登る予定だった伊豆ヶ岳。初詣は時期を逸しているため、今回、伊豆ヶ岳登頂はもちろんのこと、かつて伊豆ヶ岳のシンボルにもなっていた鎖場を楽しむ事と、浅見茶屋で手打ちうどんを食べる事が目的。また、本格的登山シーズンを目前にした、体慣らしの意味合いも兼ねている。

その他
今回歩いたコースの大半は、埼玉県の「関東ふれあいの道(3)伊豆ヶ岳を越えるみち」(外部リンク)に該当する。

伊豆ヶ岳コースレポート

正丸駅 ~ 登山口

【9:06】正丸駅に到着。
2月だが天気が良いためか、正丸駅周辺はハイカーやサイクルスポーツの人たちで賑わっている。トイレを済ませて、出発準備を整える。

【9:23】正丸駅を出発。
正丸駅の南側(飯能側)に道標が設置されているので、道はすぐにわかると思う。
線路の下をくぐったあとは登山口まで舗装道路を歩く一本道。正丸駅から登山口までは、後半に傾斜が出てきて、上着を脱ぐ場面もあったが、体力を著しく消耗するようなことはない。
【9:42】伊豆ヶ岳の登山口に到着。
山と高原地図では「正丸峠分岐」と書かれている地点。真っ直ぐ進んで正丸峠を経由しても伊豆ヶ岳に登れるが、ココから直登で伊豆ヶ岳に登ったほうが近道。道標に「大蔵山コース」と書かれている方向へ進む。

登山口 ~ 五輪山

序盤は沢沿いを登る、緩やかな傾斜の登山道。15分ほど登り沢を離れるあたりから、傾斜が急になり始める。なお山と高原地図には水場マークは付いていないが、名栗げんきプラザへの分岐前後に沢におりられる場所があるので、給水が可能。
次の写真の場所から傾斜が出始め、尾根に突き上げる沢の斜面を登り、尾根に取り付く。尾根に取り付く終盤の道は、乾燥した土の地面がズルズル滑って登りにくい上、かなりの急斜面。ココが前半戦最大の難所。
この先は、尾根上に伸びる登山道を進む。尾根に出てしまえばあとは楽かと思いきや、予想外に結構急登。
【11:31】五輪山に到着。
山と高原地図には記されていないが、正丸峠との合流地点にあるピークが五輪山。展望はきかないが、ベンチは設置されている。なお、特段何かある訳でないため、面倒であれば巻き道を使っても良いと思う。

五輪山 ~ 伊豆ヶ岳

五輪山を下って巻き道と合流するとすぐに男坂と女坂の分岐に到着。この男坂の鎖場だが、トラロープが張られており実質通行禁止になっている。今回の目的の1つがこの鎖場なので、躊躇なく進む。

この鎖場だが、同じく鎖場がシンボルとなっている乾徳山の鎖場よりも、高度感や長さ、危険度は一段格上。長めの鎖が、二段階で設置されている。
ポイント 男坂の鎖場の実質通行禁止について..
設置されている注意書きには「落石危険」「女坂をご利用ください」と書かれてはいるが「通行禁止」とは書かれていない。また、持っているガイド本『日帰り山あるきベスト130』には「通行を遠慮してほしい」という表現で紹介されている。入口に設置されたトラロープも、横から難なく通れるなど中途半端な対応。これは自分なりの解釈だが「極力通行してほしくないが、絶対に通行禁止とまでは言わない」という微妙なニュアンスが感じられる。
岩には断層がありホールドはしっかりあるので、登りやすい鎖場。ただし距離は長い。危険度的には、鎖場に慣れているなら問題ないレベル。しかし、通行禁止の理由が落石なので、前後に登山者がいる場合、間隔はあけた方が良い。

ちなみに2本目の鎖場は左側から登るとほとんど鎖を使わずに登ることも可能。下から見ると2本の鎖だったが、上の方は複数の鎖が複雑に絡みあっている。

登りきったあとは、ヤセ尾根を進むが、すぐに大岩が目の前に立ちはだかる。この大岩は左から巻けそうだが、道が細く左側が急斜面になっているので、かえって危険。ココは岩の上を通過したほうが安全。
男坂の出口は完全に封鎖されていた。好き好んで下りで鎖場を使う人はいないと思うが、実質的には登り専用の鎖場。
伊豆ヶ岳 【10:48】伊豆ヶ岳山頂広場に到着。
男坂の出口から数秒で到着。伊豆ヶ岳山頂スペースは縦に長く、山頂標識は南側に設置されている。Wikipediaでは「山頂からは西武ドーム、空気の澄んだ快晴の日には都心の高層ビル群や浅間山、男体山まで見渡すことができる」と書かれていたが、木々が邪魔して展望は良くない。周辺は山ばかりで、街並みが見える場所なんてあったかな?
ポイント 伊豆ヶ岳おばーさん追悼の碑
数十年前のことだが、かつて伊豆ヶ岳山頂に伊豆ヶ岳山荘があったそうで、レリーフは山荘の人気おばあさんを偲んで設置したもの。当時あった山岳会「仔ぐま山岳会」の会員は、休日を利用し山伏峠から頻繁に伊豆ヶ岳に登っており、その際山荘で使う水も運んでいたそうで、そのお礼に山荘で頂く一杯のビールを楽しみにしていたらしい。その後、山荘のおばあさんが亡くなり山荘が閉鎖されてしまったため、山岳会の人たちが、おばあさんを偲んで設置したらしい。
山頂でお湯を沸かそうと思ったが、ガスバーナーを忘れた事に気付く。もともと「浅見茶屋」でうどんを食べるため、山頂は軽食で済ます予定だったので大きな問題ではないが、シャリバテにならないように行動食で食いつなぐことに。

伊豆ヶ岳 ~ 高畑山

【11:28】伊豆ヶ岳を出発。
まずは、古御岳、高畑山、中ノ沢ノ頭を経由して天目指峠(あまめざすとうげ)を目指す。

【11:43】古御岳に到着。
伊豆ヶ岳から下ったあとの古御岳への登り返しが、想定外にキツかった。小御岳山頂には、屋根付きの簡易休憩所が設置されている。展望はそれほど良くないが、ココで食事をしている登山者もいた。

古御岳から高畑山へは大半が下り道。最後に高畑山への登り返しも少しあったが、それほど苦もなくたどり着けた。

高畑山 ~ 天目指峠(あまめざすとうげ)

高畑山の次は、中ノ沢ノ頭。高畑山のすぐ先で、送電鉄塔の側を通過するが、アンテナのような珍しい形をしていた。送電鉄塔以降は、車道のような道と登山道が要所で交錯。ちなみに、高畑山を過ぎたあたりから、子の権現の鐘をつく音が聞こえ始める。
中ノ沢ノ頭は主登山道から外れた迂回路上にあるが、その迂回路の入口を見逃してしまう。後に写真を整理していて気づいたが、上の写真の右側に道と張り紙が見えるので、おそらくココが迂回路の入口だったかと。左側から登ってくる登山者に気を取られて全く気づけなかった。迂回路の合流地点もあったはずだが、そちらは全くわからず。
天目指峠
【13:04】天目指峠に到着。
天目指峠には休憩所が設置されているが、人気のない寂しげな峠。ちなみに天目指峠には伝説があるらしく、その説明書きが設置されていた。
ポイント 「天目指峠」の名前の由来
読み方は「あまめざすとうげ」。「天目」とはこの付近の方言で、豆柿(約1.5cmほどの小さな柿)のことで、「指」は山地を焼いて種をまく焼畑のこと。つまり「豆柿が自生する、焼畑が盛んな地区の峠」というのが名前の由来。

天目指峠 ~ 子の権現 天龍寺(ねのごんげんてんりゅうじ)

天目指峠から次の「子の権現 天龍寺」まで大きく登り返すことになるが、これが想定以上に長くキツかった。天目指峠の標高490mから子の権現手前の愛宕山の標高656mまで、166m登り返す。途中に下りもあったので、実質200m弱ほど登り返すことになるだろう。
登り返しは3段階あり、下山の終盤でこれだけ登らされると、精神的にも体力的にも結構キツイ。
【13:38】愛宕山に到着。
愛宕山には小さな祠が祀られており、反対側の登山道に鳥居もあったので、子の権現の奥の院的な位置付けかと。愛宕山までくると、道中で聞こえていた鐘の音が間近に聞こえるようになり、子の権現が近いことを実感できるようになる。

【13:49】子の権現 天龍寺に到着。
天龍寺には鐘楼があり、誰でも自由に釣鐘をつくことできる。高畑山あたりから、鐘の音が不定期に聞こえてくると思っていたが、参拝者が気まぐれに鳴らしていた鐘の音だったようだ。

鐘楼の近くには「東京スカイツリー眺望所」という展望所があり、寄ってみたが景色が霞んでおり、東京スカイツリーどころか街並みもほとんど見えなかった。
ポイント 二本杉
開山の祖である「子の聖」が、食事に使った杉の箸をさしたものが根付いたと言い伝えられている、樹齢およそ1000年の杉。しかし、現在北側の杉は折れてしまい、幹の部分が残るのみとなっている。埼玉県指定天然記念物に指定されている。

子の権現 天龍寺 ~ 浅見茶屋 ~ 吾野駅

天龍寺のあとは、最後の目的地である浅見茶屋に向かう。
【14:53】浅見茶屋を出発。
浅見茶屋からは、吾野駅に向かうだけ。1時間ほどかけて林道を歩く。途中に廃業になった民宿で築350年の古民家「豊山荘」や、不動滝など、プチ名所があるので、探しながら歩くと良いかもしれない。
【15:30】吾野駅に到着。
最後は電車の時間に合わせるためダッシュしました。秩父とはいえ、電車のダイヤは1時間に1本ぐらいしかないので。

伊豆ヶ岳コースタイム

予定 実際 場所
- 09:06~9:23 正丸駅
- 09:42 伊豆ヶ岳登山口
- 10:48~11:28 伊豆ヶ岳
- 11:43 古御岳
- 12:13 高畑山
- 13:04 天目指峠
- 13:49~14:05 子の権現 天龍寺
- 14:31~14:53 浅見茶屋
- 15:30 吾野駅

伊豆ヶ岳の難易度

難易度

11/30

総合難易度
必要体力 体力難易度3
コース距離 コース距離難易度3
所要時間 所要時間難易度2
危険度 危険度難易度2

登山難易度 登山難易度5
小屋・水場 小屋・水場難易度1
アクセス アクセス難易度0

総合難易度 総合難易度4

登山DATE

  • 歩行距離:14.45km
  • 高度上昇:0,835m
  • 高度下降:0,957m
  • 出発高度:0,298m
  • 最高高度:0,851m

  • 標高の差:0,553m
  • 活動時間:04:49
  • 休憩時間:01:18

  • 合計時間:06:07
必要体力・距離
登山口から伊豆ヶ岳まで、距離は4km弱、時間も約2時間とこの数値だけ見ると大したことなさそうだが、急登が多く体力的にはそれなりにキツかった。体力的にキツイ区間は、序盤の沢から尾根へ上がる道、尾根へ上がってから五輪山まで、伊豆ヶ岳以降は古御岳への登り、そして天目指峠から愛宕山への登り返し。持っているガイドブックでは「中級者向き」とされており、関東ふれあいの道でも「健脚者向き」コースとなっているので、あまりなめてかからない方が良い。
危険度

男坂の鎖場を使わなければ、滑落するような危険箇所はない。登山者も多く、踏み跡もしっかりしており、道標も多いので、道迷いの心配は皆無。と言いたいところだが、埼玉県の山岳遭難発生状況を確認すると、伊豆ヶ岳での事故は「道迷い」が多い。こんなわかりやすい登山道で道迷いするかな?と思ったが、伊豆ヶ岳はシニアが多いので、登山者属性が事故の要因に影響していると思う。

男坂の鎖場だけで言えば長さと高度感のある、なかなか登り応えのある楽しい鎖場だった。技術的難易度は高くなく、鎖場に慣れている人や、鎖場が得意な人であれば、問題はない。ただし、滑落したら死ぬ可能性も十分ある傾斜と高さなので、初心者やシニアなどは、女坂を登ったほうが良い。まあ、もともと実質通行禁止だし。
山小屋・水場・アクセス

序盤の沢以外に水場はないが、日帰り前提の山なので、大きな問題はない。山小屋も同様。

奥武蔵といっても秩父よりも都心寄りだし、駅から徒歩でも登れるので、最寄駅・登山口ともにアクセスはかなり良い。
総括

お気軽登山より少し難易度高めという位置付けで、登るには良いと思う。

ただし、前情報で聞いていたより展望は良くなかった。1,000m未満という標高が影響しているのか、山頂付近でも木が多く、展望の開けた場所はほとんどない。枯れ木の冬でこの状況なので、葉の生い茂る春・夏の展望は、なおさらきかないと思う。
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