アポイ岳

アポイ岳登山

アポイ岳

Apoidake

白

[アポイ岳登山レポ]
11月に登る北海道のアポイ岳登山

2023年11月5日(日)天候:快晴
アポイ岳ジオパーク登山口 ~ アポイ岳~ 吉田岳 ~ アポイ岳 ~ アポイ岳ジオパーク登山口
  • アポイ岳花の百名山新花の百名山世界ジオパーク
  • 北海道様似郡様似町に位置する標高810.5mの山。日高山脈に支稜線西南端に位置しており、アポイ岳から隣のピンネシリ山一帯は、かんらん岩(マントルが冷えてできた岩石)でできており、これだけ大きく新鮮な状態の岩帯は世界的にも珍しく、日本の地質100選に選定されている。また、かんらん岩を中心とした特殊な自然環境により、低標高にもかかわらず約80種の高山植物が生育し、固有種は20種近くに及ぶため、花の百名山にも選定されている。さらに、2015年にはユネスコの「世界ジオパーク」に認定された。
  • 吉田岳
  • 北海道様似郡様似町に位置する標高825mの山。アポイ岳と同じ日高山脈の支稜線西南端、アポイ岳とピンネシリの間に位置している。
ポイントユネスコ世界ジオパーク
地質遺産などの自然環境やその理解を深め、保全と活用を通じて、自然と人間との共生をはかることを目的に、ユネスコが実施している事業。2024年1月現在、世界に48カ国195カ所あり、そのうちの10ヵ所は、日本にある。ちなみに、日本ジオパークは日本ジオパーク委員会が認定する国内版のジオパーク。

アポイ岳のコース

アポイ岳のコース アポイ岳のコース。
アポイ岳の登山口は、西のアポイ岳ジオパークビジターセンター内の登山口と、北のピンネシリ登山口の2つ。ただ、ピンネシリ登山口の利用者は極端に少ないため、実質的にはアポイ岳ジオパークビジターセンター内の登山口の1択。コースも1択のみだが、アポイ岳で引き返すルート以外に、アポイ岳の先にある吉田岳まで足を伸ばすルートがある。
  • アポイ岳往復ルート
  • アポイ岳ジオパークビジターセンターからアポイ岳までを往復するルート。
  • 吉田岳往復ルート登り利用 下り利用
  • アポイ岳ジオパークビジターセンターからアポイ岳を経由し、吉田岳までを往復するコース。
注意 アポイ岳の登山地図
山と高原地図では、アポイ岳の登山地図は販売されていません。アポイ岳ジオパークのWEBサイトで、簡易的な地図がPDFでダウンロードできます。
※「アポイ岳 登山地図」で検索するとすぐに見つかる。

アポイ岳の登山計画

プラン
所要で11/3に、北海道の美瑛町で用事があったため、この時期でも登れる山として見つけたのがアポイ岳。以前に「にっぽん百名山」で紹介されていたので、山の存在自体は知っていた。天気予報は「C(登山に適さない)」だったので、行くかどうか迷っていたが、直前に「A(登山に適しています)」となる。今回は遠方で飛行機などの都合もあり、日にちをずらせないので奇跡でした。
アクセス
かつて襟裳岬の近くまで運行していたJR日高本線は、2021年4月に鵡川(むかわ)から様似(さまに)までの区間が廃線になっているため、電車でアクセスはできない。札幌や帯広からJRバスも出ているが、夜に帯広空港からのフライトを予約していたので、機動性など含めて臨機応変な動きができるレンタカーでアクセスすることにした。
スケジュール
前日の11/4を移動日に設定。午前中に美瑛町から帯広に電車で移動。帯広駅近くで昼からレンタカーを予約していたので、帯広からは車で、様似町の隣、浦河町で予約していた宿まで移動する。翌日早朝に浦河町の宿からアポイ岳にアクセス。下山後は車で帯広空港まで移動し、空港隣接のレンタカー屋で車を返却する。

アポイ岳コースレポート

アポイ岳ジオパークビジターセンター ~ 5合目避難小屋

【7:20】アポイ岳ジオパークビジターセンター。
6時半ぐらいには到着している予定だったが、今回は車だしスケジュールにも余裕あるので、多少寝過ごしてもいいか、と思ってたら、寝過ごしました。
【7:48】出発
寝過ごした上に準備ももたついてしまった。1合目の標柱がある登山口まで、ジオパークビジターセンター内を歩く。道中、道標はしっかり設置されている。
一合目の標柱を過ぎると本格的な登山道に。ちなみに◯合目の表記は山頂まで一定間隔で設置(表示)されている。序盤の三合目ぐらいまでは、緩やかな傾斜の道で、整備もしっかりされていて歩きやすい。
5合目山小屋までの間に合計2~5の合計4つの休憩所が設置されている。ただ、まだスタートして間もなく、体力を消耗するような場所もなかったので、休憩するほど疲れていない..。
第4休憩所 第4休憩所の側には一年中枯れない沢が流れており、絶滅危惧種のニホンザリガニが生息している。ちょっと探してみたが、さすがに探してすぐに見つかるような場所にはいない。四合目を過ぎたあたりから、登山道に少し傾斜が出始める。あと、アポイ岳の登山道にはいくつか熊よけの鐘が設置されており、鳴らすと大きな鐘の音が山中に響きわたる。
ポイント「B1~10」の看板
ユネスコ世界ジオパークは単なる自然環境の保護だけではなく、自然環境や地域の文化への理解を深め、科学研究や教育、地域振興等への活用が目的とされている。そのため、アポイ岳ジオパークでは、ジオパーク内をA~E5つのエリアに分け、各エリアの要所に「Ecological(生態系)」「Geological(地形・地質)」「Historical(文化・歴史)」と、3つの切り口で、知識や理解を深めるための、うんちく看板が設置されている。
5合目避難小屋 【9:02】5合目山小屋に到着。
5合目までくると、展望が一気に開け海も見えるようになり、山頂も五合目から捉えることができる。中間地点なのでココで中休憩。ちなみに5合目山小屋はあくまで避難小屋で、泊まれるような感じではない。[山小屋内部

5合目避難小屋 ~ アポイ岳山頂

【9:10】5合目山小屋を出発。
5合目の標高はたった375mだが、以降は森林限界を越え、展望が開けた道となる。この点からも、アポイ岳が特異な山であることがわかる。また、5合目から馬の背お花畑までの区間は、登山道に傾斜があるので、最も体力を使う区間。とはいっても時間的には30分ぐらいだし、標高がぐんぐん上がっていき、展望・眺望は良いので、苦しさ以上に楽しく登ることができる。
上の写真の手前に、六合目の標識があったはずだが、見落としたようだ。もしくは、今はなくなってしまったのかも。
馬の背から八合目までの道だが、馬の背の背の部分を一直線に歩くのではなく、左側や右側の斜面をトラバースしている。また、八合目手前に、旧幌満お花畑への分岐(迂回路)があるが、手持ちの地図には詳しい説明がなく、この時はよく分からなかったのでスルー。
八合目~九合目の区間は岩場。ただし、安全対策でロープも張られているし、それほど危険な岩場ではない。
アポイ岳 【10:21】アポイ岳の山頂に到着。
何故か山頂だけはダケカンバなどの高木に覆われているという謎。11月で葉が落ちている季節なので、木々の隙間から景色は見えるが、春夏だと木々の葉で、景色はほとんど見えないらしい。山頂スペースは狭くもないが、広くもない。今の時期は問題ないが、花期は大勢の登山者がやってくるそうなので、そうなると過密状態になるだろう。
実は吉田岳まで行くか決めていなかったが、想定よりも吉田岳に向かう人がいたことと、ココで引き返すのもなんか消化不良をおこしそうだったので、吉田岳まで足を伸ばすことに。まあ、自分の性格的に、こういうケースは、行くことが多い。

アポイ岳 ~ 吉田岳

【10:26】アポイ岳の山頂を出発。
アポイ岳から吉田岳方面に下る途中で腰を落として座れる岩場がある。地元の登山者に教えてもらったが、花期は大勢の登山者で山頂が混み合う上、山頂からの景色も見えないので、この岩場で昼食や休憩をとるのがオススメとのこと。目的地の吉田岳だが、アポイ岳出発当初は、遠くに3つのピークが見えるものの、どれが吉田岳が判別つかず。
アポイ岳~吉田岳の道だが、アップダウンはほとんどなく、体力的にそれほど苦ではない。また、見晴らしの良い稜線を歩くので、開放感があり歩いていて気持ちがいい。
このあたりまでくると、吉田岳の山頂を目視で特定できるようになる。

吉田岳 【10:56】吉田岳に到着。
吉田岳は、標高825mのため、アポイ岳より15m標高は高い。

山頂の形から推測した想定どおりだが、山頂スペースはかなり狭く、収容キャパはMAX7~8人かな..。ただ、このとき山頂に滞在していたのは3人だったので、快適だった。今回は遠征で荷物を少なくするため、ガスバーナーは持参していなかったが、この狭いスペースでガスバーナーを使うと、他登山者から嫌がられそう。
上の写真の3つのピークの真ん中がピンネシリ。ちなみにピンネシリまでの所要時間は片道2時間、往復4時間。アポイ岳からピンネシリまで行くには時間的ハードルが高い。

吉田岳 ~ アポイ岳 ~ 旧幌満お花畑

【11:40】吉田岳を出発。
地元の登山者の方と話をしたりしていたので、なんやかんやで40分ほど滞在。あとはきた道を戻るだけ。
アポイ岳 【12:12】アポイ岳の山頂まで戻る。
はっきり覚えていないが、写真の記録から12時半までアポイ岳で休憩していたようだ。下山しようとしたところ、旧幌満お花畑経由の迂回路があったので、ちょっと寄ってみた。
旧幌満お花畑

【12:46】旧幌満お花畑に到着。
かつてヒダカソウの群生地であった旧幌満お花畑だが、繰り返された盗掘や地球温暖化によるハイマツ群落の拡大により、数が激減し絶滅危惧種に指定されている。まあ、もとよりこの季節は時期外れですけど。そういう背景もあって、なんか寂しげな雰囲気。

南東の幌満地区から、旧幌満お花畑を経由して登るコースも存在していたようだが、2006年4月に閉鎖されており、現在は通行禁止。
ポイント アポイ岳では、希少な動植物を保護するため、北海道条例により登山道以外の立ち入りが禁止されている。

旧幌満お花畑 ~ アポイ岳ジオパークビジターセンター登山口

旧幌満お花畑からは、主登山道までトラバース道を歩く。八合目付近にある合流地点までは、飛ばし気味で歩いて約15分。すぐに合流できると思っていたので、感覚的にはとても長く、焦燥感にかられてしまった。ちなみに、旧幌満お花畑の迂回路だが、道中登山者には誰にも合わず。
主登山道に合流してから5合目小屋までの道だが、アポイ岳登山の中でも最も開放感を得られる区間。水面に反射する陽の光が、良い雰囲気を醸し出している。
【14:32】一合目に到着。
それなりの時間になってしまったので、足早に駐車場へ向かう。

【14:41】駐車場に到着。
レンタカーを返却しなければならないので、17時には帯広空港に到着しなければならない。漠然と、下山後には温泉入って襟裳岬にも寄ろうと思っていたが、全然時間ないですね..。やっぱり、もっと早く出発すれば良かったと後悔。[アポイ山荘の日帰り入浴

しかも、帯広空港までの時間を2時間と見積もっていたが、ナビで算出するとなんと3時間。着替えたり、靴を洗ったりしていたため、気づいたときは既に15時だったので、すぐに出発。なんとか17時前には帯広空港に到着できたが、ちょっと焦りました。お疲れ様でした。

アポイ岳コースタイム

予定 実際 場所
06:30 07:48 アポイ岳ジオパークビジターセンター
07:50~08:00 09:02~09:10 5合目山小屋
08:40 09:35 馬の背お花畑
09:20~09:30 10:21~10:26 アポイ岳の山頂
10:10~10:30 10:56~11:40 吉田岳
11:20~11:30 12:12~12:30 アポイ岳の山頂
- 12:46 旧幌満お花畑
12:20 13:35 5合目山小屋
13:10 14:41 アポイ岳ジオパークビジターセンター

アポイ岳の難易度

難易度

15/30

総合難易度
必要体力 体力難易度2
コース距離 コース距離難易度3
所要時間 所要時間難易度2
危険度 危険度難易度1

登山難易度 登山難易度4
小屋・水場 小屋・水場難易度1
アクセス アクセス難易度5

総合難易度 総合難易度5

登山DATE

  • 歩行距離:13.57km
  • 高度上昇:0,908m
  • 高度下降:0,908m
  • 出発高度:0,070m
  • 最高高度:0,825m

  • 標高の差:0,755m
  • 活動時間:05:38
  • 休憩時間:01:15

  • 合計時間:06:53
必要体力
全体を通して激しい登りや険しい場所はほとんどないが、あげるなら5合目山小屋~馬の背お花畑の区間と、八合目~山頂までの区間。どちらも急勾配なので体力は使うが、長い時間続くわけではないので、大きな問題はない。
時間・距離
アポイ岳だけなら、登り2時間30分~3時間程度が目安とされている。今回は吉田岳まで足を伸ばし、旧幌満お花畑にも寄ったので、距離は長くなってしまったが、それでも活動時間はトータル6時間以内に収まった。
危険度
アポイ岳までなら、危険箇所はほとんどない。ただ、5合目避難小屋以降が森林限界を越えるため、風の強い日は要注意。あと、吉田岳まで行くなら、細い尾根上を歩くため、危険度は少しUPする。特に残雪期は、注意が必要かと。道迷いの心配はない。
山小屋・水場
水場は第4休憩所に沢はあるが、日帰り前提のショートコースの山なので、水場や山小屋はなくても問題ない。
アクセス
北海道主部の最南端という地理上、北海道民でもなければアクセス難易度は高い。さらにJR日高本線の、鵡川から様似までの区間が廃線になっていることもあり、公共交通機関利用はさらにハードルが高い。幸いアルプスのようなマイカー規制はなく、登山口近くまで車で行けるので、アクセスするなら車がオススメ。帯広空港から2時間ほどの距離なので、道外からでも飛行機と車(レンタカー)でアクセスすれば1泊2日のスケジュールでもいけるだろう。
アポイ岳の魅力

一言で例えるならプチアルプス。標高810mという1,000mに満たない山にも関わらず、5合目以降は森林限界を越え、標高2,000m級のような稜線歩きを楽しめる。さらに北海道の雄大な大地に加え、海や海岸線の眺望や景色を楽しめるなど、魅力満載。春の花期ならさらに魅力もUPするだろう。北海道民以外の知名度はそれほど高くないようなので、知る人ぞ知る名山といった感じ。

あと、11月のアポイ岳の登山記録を年度別でいくつか確認したが、雪が積もっている記録は確認できなかった。北海道の中でも積雪量の少ない山らしいので、11月でも登れるということでも希少価値は高い。
総括
アポイ岳までなら、危険箇所もほとんどなく、登山初心者でも登れる難易度。それでいて魅力満載。300名山にも入っていない山だが、2015年にはユネスコの「世界ジオパーク」に認定されるなど、近年は評価も上がっている山ということもあり、超オススメです。ただ、東京からだと地理的に簡単にこれないのが難点。
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