笠ヶ岳

笠ヶ岳登山

笠ヶ岳

Kasagatake

白

[笠ヶ岳登山レポ]
急登の笠新道から登る8月の笠ヶ岳登山

2022年7月31日(日)~8月1日(月)天気:曇りのち晴れ
新穂高温泉 ~ 笠新道登山口 ~ 笠ヶ岳 ~ 新穂高温泉
  • 笠ヶ岳(かさがたけ)日本百名山新花の百名山
  • 北アルプス(飛騨山脈)にある標高2,898mの山。山域は岐阜県高山市に属しており、県境が無い岐阜県内単独の山としては、最も高い。笠ヶ岳は、北アルプスの主稜線から西側に1本外れているため、シーズン中でも登山者は多くなく、静かな山歩きを楽しめる。山名は、笠の形をした端正な山頂の形に由来している。

笠ヶ岳のコース

笠ヶ岳の登山口は、南の中尾高原口、東の笠新道登山口と小池新道登山口の3つ。コースとしては、主に笠新道と小池新道が利用されている。
  • 笠新道登り利用下り利用人気コース!
  • 笠ヶ岳山頂に最短でアクセス可能なメジャーコースだが、北アルプスの中でも屈指の急勾配で知られている。
    前半は急勾配の斜面を4時間かけて登り、後半では杓子平カールを2時間かけて登るタフなコースで、健脚者向け。また水場も、笠ヶ岳山荘近くの雪渓までない。
  • 小池新道
  • 迂回路にはなるが、鏡平、弓折岳、大ノマ岳を経由して、笠ヶ岳山頂を目指すコース。笠新道に比べて緩やかな傾斜だが、コース距離は長くなるため途中の鏡平山荘で1泊する必要がある。
    体力に自信がなく時間に余裕のあるシニア登山者が多く利用している。
  • クリヤ谷ルート
  • 南の中尾高原口の登山口から北に向かって笠ヶ岳山頂を目指す。沢沿いを登り途中何度も徒渉するため増水時は要注意。
    また、標準コースタイムが9時間30分というロングコースで、上級者向けとされている。利用者は少ない。
山と高原地図
笠ヶ岳のコースが紹介されているのは、山と高原地図の「槍ヶ岳・穂高岳」です。地図を持たない登山は危険ですので、必ず地図を持って登りましょう!

笠ヶ岳の登山計画

プラン
コロナの影響で2020年は休業していた笠ヶ岳山荘。2021年以降は営業再開していたので、白羽の矢を立てた。
アクセス
問題となったのはアクセス。早朝に新穂高温泉にアクセスしたかったが、まいたびの「あるぺん号」はすでに満車。東京から平湯温泉までは、早朝(4時頃)に高速バスでアクセス可能だが、新穂高温泉まで行くなら平湯温泉から路線バスに乗り換えが必要。そのバスの始発が7:00と、平湯温泉で3時間も足止めをくらってしまう。早朝でタクシー利用も厳しい。そこで調べたところ、名古屋からなら早朝に新穂高温泉にアクセス可能な高速バスが出ていたため、高速バスを乗り継いで名古屋経由でアクセスした。
コース
当初は笠新道から登り、クリヤ谷ルートから下る予定だったが、2022年のクリヤ谷ルートは登山道未整備により通行不可。仕方なく、笠新道のピストンに切り替えた。

笠ヶ岳コースレポート

新穂高ロープウェイ ~ 笠新道登山口

【4:15】新穂高ロープウェイに到着。
予定より10分ほど早く到着。もう1人降車した登山者もいたが、気付けばいなくなっていた。軽く食事を取りながら、身支度を整える。準備しているとき、北に向かう登山者を数組見かけたが、槍ヶ岳か穂高岳に向かう登山者だろう。つられてそちらに進んでしまわないよう、スタート時の方角には要注意。

【4:42】新穂高ロープウェイを出発。
あとで知ったが、上の写真の奥(矢印の箇所)に橋があり、ショートカットできる。このときは知らなかったので、南の新穂高センターを経由する林道沿いを進む。
【5:00】林道ゲートを通過。
登山届は新穂高センターで出してきたが、このゲートにも登山ポストが設置されているので、ショートカット道を通ってきた場合、登山届はココで出す。
笠新道登山口までの林道歩きだが、緩やかな登り道で、体力はそれほど使わない。とは言え、新穂高ロープウェイから笠新道登山口まで1時間ほど歩かされるので、多少は疲れます。なお、登山口まで道迷いの心配はない。

【5:45】笠新道登山口に到着。
登山口に水場あり。笠新道の途中に水場はないので、水はしっかりとココで確保しておくこと。これからの長い登りに備えて、少し休憩。

ちなみに、登山口までの林道歩きで見かけたのは、シニアハイカー1組のみ。やっぱり、槍ヶ岳や涸沢に向かう登山者の方が圧倒的に多い..。

笠新道登山口 ~ 杓子平

【5:56】笠新道登山口を出発。
笠新道から第一の中間目的地は杓子平で、標準コースタイム4時間20分と、めっちゃ長い..。ということで、途中の樹林帯を抜け草付きの斜面に出たところにあるベンチを中間のポイント地点とします。序盤は樹林帯の九十九折の道をひたすら登る。これといった特徴はないが、地味にきつくて序盤からバテバテ..。
出発から1時間ほど標高1,700m地点通過。杓子平まで、たまにこの標高看板が設置されていて、登る励みになる。
樹林帯を抜けると、以降は草付きの斜面を登る。景色が変わって、振り向くと焼岳・穂高岳の山塊が見えるようになる。といってもこの日は雲被りだったが。
【7:29】ここが勝手にポイント地点にした大岩の傍らにあるベンチ。
ベンチといっても、鉄板を置いただけの簡素なもの。出発から約1時間30分だが、すでにバテバテのため、ベンチで中休憩。ベンチ以降、しばらくは左側が斜面の狭い道が続く。
頭上を旋回するヘリコプターだが、少し先の地点で動けないシニア登山者がいたようで、その登山者をピックアップするため探していたようだ。その登山者と勘違いされたようで、何度も頭上でヘリにホバリングされたし。ちなみに後に笠ヶ岳山荘で聞いたところ、その登山者は昨日から登山道でビバークしていたそうで。動けなくなった原因は不明だが、排泄物垂れ流し状態だったらしい。

標高2,100m地点は、晴れていれば槍・穂高の展望が一望できる。この日は雲を被っていたので展望はいまいち。ちなみに、この標高○○m地点の看板、標高1,800mの次は2,100mだったので、設置間隔はバラついている。

その後も単調な急斜面をひたすら登る苦行。このあたりになると下山者とすれ違うことも多くなる。あと、道幅が狭いため、小休憩の場所探しに苦労した。
【10:07】杓子平に到着。
登山口から約4時間。ほんと長かった..。 杓子平から笠ヶ岳の山頂をとらえることができるが、この日は雲被り。ちなみに、杓子平という地名はこれから登る杓子平カールのことを指している。つまり、厳密な意味で、この地点は杓子平の入口となり、山と高原地図には、2,472mとだけ記されている。
この場所で動くのが嫌になり、結局30分弱ほど休憩をとる。ちなみにこの地点は、日陰がほとんどなく、鉄板焼き状態で激暑です。

杓子平 ~ 笠新道分岐 ~ 抜戸岳

【10:35】杓子平を出発。
次なる難所は目の前に広がる杓子平カール。このカールを登りきり稜線の笠新道分岐までの標準コースタイムは2時間。萎える心を奮い立たせて進む。
杓子平カール内の序盤の道はガレ場だが、動かない岩が大半のため、足の踏ん張りがききやすく登りやすい。ただ、体力はあまり残っていないため、登っては休みを繰り返すインターバル方式で少しずつ登る。
杓子平カール内はお花畑が広がっている。登りでは余裕がなかったので、花の写真は下山で撮影しています。
【12:08】笠新道分岐に到着。
ポイント地点ではあるが、名前のとおり単なる分岐地点であり、休憩できるスペースはない。ただ、このときは昼食をとっているグループあり。少し休憩していたが、落ち着かないので、自分は抜戸岳まで足を延ばし、そこで休憩することにした。笠新道分岐から抜戸岳までは正味10分弱といったところ。
抜戸岳へはショートカット道も存在する。笠新道分岐に下りないで、稜線から上の写真の矢印あたりの道なき道を進んでくれば、より楽に抜戸岳にアクセス可能。まあ、ショートカットと言っても、たいして変わりませんが..。

抜戸岳 ~ 笠新道分岐 ~ 笠ヶ岳山荘

【12:58】笠新道分岐まで戻る。
ココから笠ヶ岳までは稜線歩き。天候は微妙だが、難所を越えたので晴れ晴れした気分。
笠新道までの稜線上は、アップダウンもそれほどなく、危険個所もない。終盤で稜線上の抜戸岩を抜けるが、名前の通り岩の間を抜けるので、危険ではない。ちなみに途中、日帰りする登山者とすれ違って少し会話したが、自分的には笠ヶ岳レベルの山を日帰りする人の気が知れない。こんな急勾配のコースを日帰りピストンするなんて、単なる苦行だと思うが..。
苦もなく笠ヶ岳の直下まで辿り着けたが、最後はやはり登る。写真でみると大したことなさそうだが、結構急。これは遠くから見える山容からもわかっていたことだけど、登る気力がなかなか湧いてこない..。時間の余裕もあるので、気持ちに逆らわず、ココで15分ほど休憩。
テント場になんとか辿り着いたが、そのあとのガレ場もキツイ..。
【14:36】笠ヶ岳山荘に到着。
テント場を過ぎたあたりで、パラパラと雨が降り出し、到着してすぐに強烈なスコールに見舞われる。すっかり忘れていたが、この日は夕方から雨予報だった。あと数分遅れてたら、危なかったし..。ということで笠ヶ岳の登頂は明日に持ち越し、本日の工程はこれにて終了です。とにかく疲れました。
ポイント 笠ヶ岳山荘の感想や評判はブログにまとめているので、興味のある方はそちらもご参照ください。
■ 笠ヶ岳の山小屋「笠ヶ岳山荘」の評判と感想

笠ヶ岳山頂

【4:40】笠ヶ岳山頂。
笠ヶ岳山荘の朝食5:00と8/1の日の出予想4:53がモロ被りしており、ご来光を小屋の前で拝む予定だったが、時間もあったのでひとまず山頂まできてみた。小屋から山頂までは、10分強の道のり。
【5:03】予定より5分ほど遅れの日の出。

なんやかんやで5時を過ぎてしまったので、朝食をとるため急ぎ笠ヶ岳山荘へ戻る。

朝食後には再び山頂へ。笠ヶ岳山頂は北と南2つのピークがあり、北側が小笠、南側が大笠と呼ばれている。最高点は大笠で三角点も大笠に設置されている。
笠ヶ岳からは、北は薬師岳に黒部五郎岳、東は槍ヶ岳に穂高岳、南は焼岳、乗鞍岳、御嶽山、西は白山を望むことができる。山頂スペースはそれほど広くないが、2つのピークがあるので、適度に登山者がばらけてくれる。
当初、下山はクリヤ谷を予定していたが、コロナの影響で登山道の整備が行き届かず、2022年度は通行止めとなっていた。そのため、下山も登りと同じ笠新道を下るので、時間の余裕ができ、山頂でゆっくり過ごすことができた。
ポイント播隆平(ばんりゅうだいら)
笠ヶ岳の東側にはカール地形の播隆平があり、その播隆平の底にある小さな池を、播隆池と呼ぶ。現在、播隆平におりる登山道はない。笠ヶ岳山荘の東側あたりにあるはずだが、残念ながら写真撮影を忘れました。
笠ヶ岳からのパノラマ写真 笠ヶ岳からのパノラマフルスクリーン(クリックで始動)

笠ヶ岳山頂 ~ 笠新道分岐 ~ 杓子平

【6:45】笠ヶ岳山荘を出発
ちなみにテント場近くに、雪渓の水が流れる水場がある。(秋には枯れる可能性あり)冷たくてとっても美味しい水です。
さて杓子平カールの下りだが、昨日と違ってこの日はカンカン照りで、めっちゃ暑い..。下りでこれだけ暑いと登りだった場合は地獄。昨日は雲っていたので、逆に登りやすくて良かったのかも。
登りはバテバテでキツかったので、花を楽しむ余裕はなかったが、よくよく見ると結構咲いてます。さすがは新花の百名山です。

【8:40】杓子平(入口)に到着。
昨日は霧で見えなかった笠ヶ岳もバッチリ見え、また播隆平がこの位置からだとわかりやすい。時間に余裕があるので、ココでも15分ほど休憩。

杓子平を以降は斜面を下るだけ。ただこの区間が長い。しかも引き続き暑い..。

杓子平 ~ 笠新道登山口

標高2,100m地点だが、今日は穂高、焼岳、乗鞍岳まで見えて展望バッチリです。
杓子平以降も結構花が咲いてました。それとこの区間は結構急なので、下りは転倒要注意。この区間でバランスを崩し、思いっきりストックに体重をかけてしまいストック折れました..。買ったばかりだったので結構ショックだし。
笠新道登山口でこれから登る登山者とすれ違う。時間はすでに11時30分。この笠新道をこの時間から登るとは、強者です..。
【11:33】笠新道登山口に到着。
9時頃に杓子平から下り始めたので約2時間半。やっぱこの区間長いわ..。

笠新道登山口 ~ 新穂高ロープウェイ

でもまだ1時間ほど、新穂高温泉まで歩かなければならない。この林道だが、往路では気付かなかったが、壁面の石垣(結構長い区間)から冷たい空気が出ており、石垣の近くを歩くと涼しくて気持ちが良い。この石垣自体が風穴の役目をなしているようで、なんか不思議です。
【12:24】新穂高ロープウェイに到着。
ロープウェイの近くにある「ホテル穂高」の日帰り温泉は13時から。でも、少し南に下った「中崎山荘」は営業してたので、こちらの温泉を利用。いや、ほんと疲れました...お疲れさまでした。

笠ヶ岳のコースタイム

1日目

予定 実際 場所
04:30 04:15~04:42 新穂高温泉
05:40~05:50 05:45~05:56 笠新道登山口
10:10 10:07~10:35 2,472m
12:10 12:08 笠新道分岐
12:20~12:50 12:23~12:53 抜戸岳
14:00~14:20 14:36 笠ヶ岳山荘
14:30 - 笠ヶ岳山頂

2日目

予定 実際 場所
04:30~05:30 04:00~04:25 笠ヶ岳山荘
05:50~06:30 04:40~06:20 笠ヶ岳山頂
- 06:30~06:45 笠ヶ岳山荘
- 07:46 笠新道分岐
- 08:40~08:55 2,472m
- 11:33 笠新道登山口
- 12:24 新穂高温泉

笠ヶ岳の難易度

難易度8

27/30

総合難易度
必要体力 体力難易度5
コース距離 コース距離難易度5
所要時間 所要時間難易度5
危険度 危険度難易度2

登山難易度 登山難易度9
小屋・水場 小屋・水場難易度2
アクセス アクセス難易度4

総合難易度 総合難易度8

登山DATE 2日間

  • 歩行距離:27.12km
  • 高度上昇:2,175m
  • 高度下降:2,180m
  • 出発高度:1,117m
  • 最高高度:2,897m

  • 標高の差:1,780m
  • 活動時間:14:09
  • 休憩時間:01:24

  • 合計時間:15:33
必要体力

笠新道で語らないわけにはいかないのが体力面。特にキツイ区間は登山口から標高2,472mの杓子平(入口)まで。この区間だけで、標準コースタイムは4時間20分と、とにかく長いので、体力コントロールをうまく行い、気力が途切れないよう、頑張って登るしかない。後半戦の杓子平カールもキツイが、実質ココを登りきればあとは稜線を歩くだけなので、モチベーションは上げやすい。加えて、お花畑とカール独特の見ごたえある景色を楽しめるので、キツさや疲労を軽減してくれる。

そして最後の笠ヶ岳山頂直下の登り。この区間単体では距離も短く大したことないが、これまで7時間ほど歩いてきた疲労の蓄積があるため、最後のトドメ的な存在。自分の場合、この最後の上りを登る気力が湧いてこず、時間をかけてグズグズしながら登りきった。

ちなみに笠新道は急勾配で、下山時は膝への負担が大きいため、登りは笠新道、下りは小池新道という方もいた。
時間・距離
コース距離も長く、時間も必要。時間に余裕がないと、余計にツライので、新穂高温泉には早朝のアクセスをおすすめします。今回は、早朝アクセスにこだわり早い時間から登ったため、時間に余裕があったのはほんと救いだった。
危険度・水場

前半の斜面を登る道は、反対側が崖になっている箇所が多数あるため、注意は必要。ただし、危険度自体は高くなく、普通に登っていればまず問題ないはずだが、体力低下でよろけて滑落という可能性は十分ありえる。杓子平以降は、そういった箇所もない。あと、コース全体を通じて鎖場はゼロ。「天候不良で視界がきかない」といったようなケースを除けば、道迷いの心配もない。

水場は笠ヶ岳山荘か山荘近くの雪渓(秋期は枯れる可能性あり)以外にないため、登山口から山頂までの水は確保して登らなければならない。この水場の少なさも、難易度を上げている要因。山頂で水の確保ができるのは唯一の救い。
アクセス
新穂高温泉は岐阜県側なので、公共交通機関でアクセスするなら、関東より関西のほうがアクセスしやすい印象。位置的には上高地に近いが、上高地のアクセスの良さとは対照的。ちなみに、笠新道から登って日帰りも不可能ではないが、普通の人は笠ヶ岳山荘での宿泊は必須です。
総括
体力、距離、時間に牽引されて、山の難易度はかなり高い。とにかく激疲れします。実際、笠ヶ岳山荘にいた登山者のほぼ全員がキツかったと言っていたので、登る人を選ぶ山と言って過言ではない。ただ、曜日を日・月にしたためか、登山者は意外とシニアが多かった。あまりにキツかったので、よほどきれいなお姉さんから誘われでもしない限り、もう1回登りたいとは思えない山です..。
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