[空木岳登山レポ]
深夜の駒ヶ池から登る空木岳登山!空木岳・木曽駒ヶ岳縦走登山その1
駒ヶ根IC ~ 駒ヶ池 ~ 池山小屋 ~ 空木岳 ~ 木曽殿山荘 まで
- 空木岳(うつぎだけ)日本百名山
- 中央アルプス(木曽山脈)の中央部に位置する標高2,864 mの山。中央アルプスでは、木曽駒ヶ岳に次いで2番目に高く、山域は中央アルプス県立自然公園に指定されている。山名は、春先に山頂付近に残る残雪模様がウツギの花に似ているためとされている。空木岳の東側、標高2,500~2,700m付近はカール地形となっており、空木平カールと呼ばれている。また、山頂近くには空木駒峰ヒュッテがある。
空木岳のコース
- 池山尾根登り利用人気コース!
東の池山登山口から小地獄・大地獄と呼ばれる難所を越えて、空木岳を目指すコース。コースは空木岳手前で、駒石経由と空木平カール経由とに分かれる。また、途中にある池山は巻くことができる。最も一般的なコース。
池山手前の林道終点(標高1,320m)まで車で登ってこられるが、車でなければ駒ヶ池(標高860m)から登らなければならない。標高差を短縮できるため、マイカー利用者が多い。
- 倉本コース
西の中央本線の倉本駅から中八丁峠、御岳見晴台、木曽殿山荘を経て、空木岳を目指すコース。越百山の登山口がある伊奈川ダムに駐車場があり、そこから林道を1時間40分ほど歩くと本コースの四合目に到着するため、倉本駅から歩くよりも、空木岳・南駒ヶ岳・越百山を縦走する周回コースとして使われることが多い。
余談だが、木曽殿山荘のある鞍部は木曽殿越と呼ばれ、平安時代に、武将「木曾義仲」が越えたという伝説があり、木曽殿山荘近くには「義仲の力水」と呼ばれる水場もある。
空木岳の登山計画
- 計画概要
- 中央アルプス初登山に選んだのが、空木岳と木曽駒ヶ岳の縦走。この2山を縦走する場合、ロープウェイが利用できる木曽駒ヶ岳から縦走する登山者が多い。しかし、ロープウェイを使うとつまらないので、人力にこだわり空木岳から縦走するルートを選択した。コースは池山尾根から登るコースに即決。
- アクセス
- 伊那・飯田方面は東京から高速バスが多数出ており、電車より価格も安い。しかし、朝方到着するバスはなく、深夜12時前後に到着してしまう。駒ヶ根駅付近にビジネスホテルや漫画喫茶はないため、当初近くの公園で野宿して朝一のバスで登山口に向かう予定だった。しかし、よくよく調べると、高速バスで駒ヶ根インターチェンジで下車して、そこから登山口まで歩けることが判明。中途半端に野宿するよりも、”一層のこと深夜から登ってしまおう!”と計画変更。そのため、池山小屋までは、真っ暗な登山道を登ることになった。
関連レポート
空木岳コースレポート
駒ヶ根IC ~ 駒ヶ池 ~ 林道終点
【0:30】駒ヶ根ICに到着。
バス停周辺は真っ暗。さすがに登山者は自分だけだろうと思っていたが、何処から現れたのか、1名の登山者とすれ違う。この登山者とは、後に池山小屋までご一緒することになるため、あとで知ったが、JR駒ヶ根駅から歩いてきたようだ。
【0:45】駒ヶ根ICを出発。
県道75号線を西に歩き、駒ヶ池を目指す。真っ暗だが、舗装された道路で、真っすぐ進んで、駒ヶ池で左に曲がるだけなので、道に迷うことはなかった。
【1:17】駒ヶ池に到着。
駒ヶ池の近くのトイレの灯りを利用して、タイツを履いたり、テーピングしたりと登山に向けた準備を整える。この準備をしているときにも、ヘッドライト付けた登山者が目の前の道路を右に左にと2回横切る。不審に感じたが、一先ず準備に専念。
しばらく進んだところで、再び先ほどの登山者と遭遇。さすがに気になったので声をかけたところ、登山口遭難されてました。「じゃあ途中まで一緒に行きましょう!」ってことで、ココから池山小屋までご一緒することに。真っ暗な中1人で登るより、誰かと一緒に登るほうが、退屈しないだろうし、これもご縁です。 ちなみにこの方、御年78歳。人生においての大先輩で、登山においても大ベテランです。(汗)空木岳も過去に数回登った事があるらしい。でも、やはり年には勝てないようで、方向感覚が衰えており、かなり危なっかしい..。
【1:52】池山尾根登山口に到着。
登山口の写真は事前にチェックしておりイメージできていたので、迷わず発見。この登山口から、まずは林道終点を目指す。
下山の際はこの地点までくればタクシーを呼ぶことができるようだ。一先ずここで中休憩。この地点から10分ほど登り三本木地蔵(標高1,275m)を通過。この三本木地蔵を通過して林道終点に出る直前に、急な上りがあり、ちょいと体力使います。一緒に登っている方もキツそうで、この区間は口数少なめ。
【3:22】池山林道終点(標高1,365m)に到着。
どおりでしんどいと思ったら、三本木地蔵から100m登ってました。駐車場近くにはトイレもある。さすがに疲れたので中休憩。このとき、ご一緒している方から、実は数年前に心臓の手術をしたとあかされる。いやいや、ちょっと怖いんだけど..。(汗)
林道終点 ~ 池山小屋
次なる中間目的地はタカウチ場。幸いなことに、タカウチ場までの登山道は、傾斜がなく、楽に歩くことができる。出発して20分ほど進むと、篭ヶ沢(こもりがさわ)岩窟との分岐地点に到着。さすがに真っ暗な中、岩窟見ても意味なさそうなのでパス。
【4:16】タカウチ場に到着。
タカウチ場から池山小屋までの登山道は、池山経由(1時間5分)と、遊歩道経由(40分)とがある。通常なら遊歩道だが、池山経由を選択。その理由は、コースタイムを読み間違え10分差しかないと勘違いしてしまったこと、そして時間的に池山山頂からご来光が期待できそうだったこと。同行している方とは、池山小屋での合流を約束して、一旦別行動。
【5:09】池山の山頂に到着。
時間的には陽が昇ってきてもおかしくないため、山頂で数分待つ。しかし、雲があり時間がかかりそうな感じ。ココがゴールじゃないし、あまりゆっくりもしていられないので、途中で諦めて池山小屋へ向かうことにした。
【5:30】池山小屋に到着。
池山小屋には誰もいなかったが、すぐに先程の方もやってきて合流。深夜1時から登っているので、ココで朝食も兼ねた休憩をとる。
池山小屋 ~ マセナギ
【6:20】池山小屋を出発。
さてココからいつも通りの一人登山。池山小屋の近くに水場があるため、ココで水を満タンにしておく。
斜面の途中にある小広場ってだけで、特に何もない地点。休憩せずにそのまま進む。
マセナギ ~ ヨナ沢の頭
大地獄・小地獄を越えると、迷尾根の頭※に到着。山名標識には「迷尾根」と書かれている。登山道の途中にある小さな小スペース。体力の消耗が激しくヘロヘロなため、ヨナ沢の頭手前だが、ココで10分ほど休憩。
※「迷尾根の頭」という山名標識はないが、後にガイドブックで判明。
ヨナ沢の頭 ~ 空木平避難小屋
迷尾根の頭の直後にヨナ沢の頭を通過した筈だが、結局場所を特定できず。しかし後に写真で確認すると、迷尾根の頭の少し先にヨナ沢の頭と思われる1枚が残っていた。ヨナ沢の頭に標識や目印はないので、山と高原地図はヨナ沢の頭ではなく、迷尾根の頭をポイント地点に変更してほしいところ。ヨナ沢の頭に着いたら行動食を食べる予定だったが、一向に到着しないため、予定が狂い途中かなりバテた。
ヨナ沢の頭以降も、細い道、小さなはしごが連続する。写真で振り返っても、コース自体キツイようには見えないが、疲労の蓄積からか、結構しんどかった記憶あり。【9:03】分岐に到着。
ヨナ沢の頭が見つからず、休憩や食料補給を先延ばしたことで、体力コントロールが狂い結構しんどかった。この分岐地点も狭いが、10分ほど休憩をとる。
空木平とあるように、開放感のある河原のような場所に建てられた避難小屋。近くに水場もあるのでロケーションは良く小屋もきれい。ただし、この避難小屋は幽霊が出る噂があるらしい。ちなみに、小屋を覗くと雨が降っている訳でもないのに、「コツ、コツ、コツ」という謎のラップ音が鳴っていた。こういう現象が幽霊の噂になっているのかも。[空木平避難小屋の室内]
空木平避難小屋 ~ 空木岳山頂
河原のようなガレ場を抜けると、空木岳の山頂と、その前に広がる空木平カールが現れる。とは言っても、目に見える距離なので「あと少し」と気持ちを奮い立たせるが、ココから本当の地獄だった。
登り始めてすぐに息が上がり始める。山頂は見えており、少しずつ近づいている実感はあるものの、この上りのキツさに何度も心が折れそうに。また、キツかった原因の1つに、後ろから迫ってきている濃霧。この濃霧が山頂を覆うと、展望は万事休すとなるため、気持ちも焦る。その他、深夜1時から登ってきている疲労の蓄積もあるかもしれない。まあ、原因はともかく自分登山史上ベスト10に入るキツさだったことは間違いない。駒峰ヒュッテに寄る余裕も元気もなく、道標で少し休憩して、目の前の山頂を目指す。この時点で体力の限界を越えていたと思う。数歩進むだけでもしんどい..。
時間記録用の写真を1枚撮影したあとは、フラフラになりながら、山頂近くの砂場に倒れ込む。
空木岳山頂
めちゃくちゃ疲れたけど、なんとか霧に覆われる前に到着。空木岳の山頂スペースはそれなりに広く、空木岳の人気度から照らし合わせると、山頂が人で溢れかえることはなさそう。山頂には、大地獄・小地獄あたりで前に通した登山者が数組先着している。空木岳はコース距離も長く、健脚が多い。
空木岳山頂からの展望は360度の大パノラマ。北に木曽駒ヶ岳、南に南駒ヶ岳、東に駒ヶ根市街地、西側に御嶽山の展望。しかしのこの日は、霧で東の彼方に見えるはずの駒ヶ根市街地はたまに見える程度、北の木曽駒ヶ岳にも霧がかかり、西側の御嶽山も雲で見えなかった。深夜から登ってきた事に加え、山頂直前の急登で残り少ない体力を奪われ、さらに寝不足も加わり疲労困憊。そのため、昼食を食べたあと、寝転がっていたところそのまま眠りに落ちる。ちなみに、山頂周辺の一部は砂浜のようになっており、寝心地が最高に良い。そして、13時頃目が覚めると、あたりは一面真っ白。やはり昼になると霧も濃くなる。
その後も、グダグダしながら山頂で過ごす。結局出発したのは14時だったので、合計3時間30分と山頂滞在時間の最長記録を更新。結局、序盤一緒に登った方は14時まで山頂に姿を現すことはなかった。空木岳 ~ 木曽殿山荘
【14:00】空木岳山頂を出発。
結構ガスっているが、歩くのに問題はない。木曽殿山荘まで約1時間のため、ゆっくり歩いても十分時間はある。
地図にピーク名の記載はないが、ココから木曽殿山荘まで急降下するため、名前があってもおかしくないピークだと思う。まだ、時間に余裕があるため、このピークでも20分ほど時間調整のため滞在。名も無きピークから進行方向の下を覗き込むと、下に木曽殿山荘が見える。
周辺は霧で真っ白。宿泊手続きを済ますが、1泊2食で早朝はお弁当を予約していたが、早朝のお弁当だけ予約漏れ。「うちの母は最近耳が悪いので..」と釈明されるが、そんなこと言われても困るし。お弁当ではなく山小屋での朝食なら準備できるとのことだったので、山小屋の朝食を追加してもらう。でも、翌日は雨で早出できなかったので、結果オーライでした。
木曽殿山荘は完全予約制の山小屋。ただし、予約していない人も渋々受け入れていたので、空木岳の駒峰ヒュッテまで辿り着くのが難しい場合、交渉してみるのも有り。
1階が食堂兼休憩スペースで、2階が大部屋の寝室になっている。決して新しい建物ではないが、小屋は小奇麗で掃除が行き届いている印象。鞍部にある山小屋のため展望はきかず、早着すると暇を持て余すので、山小屋到着時間は調整した方が良い。夕食はおでんだった。水場(義仲の力水)は西側の登山道を5分ほど歩いた場所にある。
印象的に、駒峰ヒュッテの宿泊者よりも年齢層は高め。中高年からシニア登山者の小グループが多く、男性ソロ登山者もちらほらいたが、女性ソロや若い山ガールはいなかった。
明日の天気は晴れ予報だが、夕方から雨が降り始め、雨は翌日の朝まで降り続いた。明日も長いコースを歩くため、明日に備えて早めに就寝。
To be continued...関連レポート
空木岳のコースタイム
予定 | 実際 | 場所 |
---|---|---|
00:45 | 00:30~00:45 | 駒ヶ根インター |
01:55 | 01:17~01:38 | 駒ヶ池 |
03:25 | 03:22~03:44 | 林道終点 |
03:55 | 04:16 | タカウチ場 |
- | 05:09 | 池山山頂 |
04:45~05:45 | 05:30~06:20 | 池山小屋 |
06:45 | 06:56 | マセナギ |
- | 07:46~07:56 | 迷尾根の頭 |
08:15 | - | ヨナ沢の頭 |
09:45 | 09:03 | 分岐 |
10:00 | 09:25 | 空木平避難小屋 |
10:45~12:15 | 10:34~14:00 | 空木岳山頂 |
13:15 | 15:25 | 木曽殿山荘 |
空木岳の難易度
17/30
総合難易度必要体力 | |
コース距離 | |
所要時間 | |
危険度 | |
登山難易度 | |
小屋・水場 | |
アクセス | |
総合難易度 |
登山DATE
- 歩行距離:17.92km
- 登山歩数:26,828歩
- 高度上昇:2,195m
- 高度下降:454m
- 出発高度:0,760m
- 最高高度:2,864mm
- 標高の差:2,104m
- 活動時間:09:01
- 休憩時間:05:39
- 合計時間:14:40
お気軽にどうぞ!
駒ヶ根ICから歩いているので、計算すると標高差約2,100mという超ハードなコースだった。前回登った赤石岳も標高差2,000mだったので、2週連続の2,000m超えはやはりキツい。それと、よせばいいのに池山にも寄ってしまったので、余計に疲れた。唯一の救いは時間がたっぷりあったこと。
まず、体力的難所は、大地獄・小地獄と山頂直前の空木平カール。大地獄・小地獄は小さなはしご、プチ岩場、痩せ尾根が連続する。小規模な難所が連続するため、疲労の蓄積で体力を消耗する。空木平避難小屋にある水場の存在を知らなかったので、池山小屋で水を満タンにしたのも裏目に出た気がする。そして、最後にして最強の難関は空木平カール。前回赤石岳の北沢カールに勝るとも劣らない立派なカール。終盤なので疲労の蓄積もあり、とにかくキツイの一言に尽きる。最後なので、体力・気力・根性を振り絞り登った。
空木岳は頑張れば駅やICから歩くことも可能なので、北アルプスや南アルプスに比べればアクセスは良い。公共交通機関でアクセスしやすい反面、登山口に直付けする登山バスは少ない。
深夜から登っているので道中はキツかったが、空木岳山頂に長時間滞在できたので、後半はゆっくり楽しむことができた。登山者は圧倒的にマイカーが多く、公共交通機関でアクセスすると、体力的・時間的ビハインドを負う。今回は空木岳から登ったが、木曽駒ヶ岳と一緒に登るならロープウェイを利用できる木曽駒ヶ岳から登ったほうが楽。実際登山者もそちらのほうが多かった。